親のありがたみを理解し
基礎・基本を学ぶ3年間
緑豊かな田園風景に囲まれた、広大な敷地の同校。放射状に6棟に分かれた学生寮では、全国から集まった生徒たちが学年別に共同生活を送っている。完全中高一貫校・完全全寮制を掲げ、高校からの生徒募集は一切しない。地元出身であっても、例外なく寮で生活する。
「本校では中学の3年間を、一生生きていくための基礎・基本を学ぶ『千日修行』と位置付け、特に重視しています。親元を離れて、初めて子どもは親のありがたみを理解し、一人で頑張ろうと決意します」と神原校長は説明する。この3年間で、生徒は規則正しい生活習慣や自己管理能力、仲間への思いやり、協調性、忍耐力を身に付ける。
また、6年間苦楽を共にすることで得た友人は一生の宝だ。「生徒は友人から感化され、将来の志望をしっかりと固めていきます。卒業生から『秀明時代の友達は兄弟同然』という言葉をよく聞きますが、実の兄弟より多い回数、一緒に食事をして風呂に入るのですから、当然でしょう」と神原校長は話す。
「知・技・心」を校訓に掲げる同校では、新聞記事などを題材に、善悪の判断力やいたわりの心を学ぶ「心の学習」の時間を設けており、その一環として日常生活におけるあいさつもしっかり指導される。寮生活を基盤にきちんとしたしつけを身に付けた生徒たちは、面接試験や進学先での評価も高い。
生徒の力をとことん伸ばす
全力傾ける教員たち
同校では難関国立大学進学コース、医学部進学コース、総合進学コースの3つのコースを開設している。今年は194人が卒業、医歯薬系学部だけで53人の現役合格者を出した。しかし、例年の突出した進学実績にもかかわらず、入学時の生徒の学力は実にさまざまだ。
大野校長は、「継続的、計画的に学ぶ、自分で調べるなど、中学の3年間で、学習の基本姿勢を学ぶことが大事です。その結果、入学時には最下位の成績でも、早稲田・慶応義塾大学に合格する子もいます」と話す。
「優秀な子どもを進学させるのが学校ではありません。偏差値に関係なく、生徒の夢に向けて、6年間でその子の力をどうやって伸ばしていくのかを考えるのが教育であり、そのために全力を尽くすことが教員の役割です」――これは創立者の教えそのものであり、同校では全教員が一丸となって、この理念を実践している。
まさに教員の熱意あってこそ成り立つシステムが、毎夕食後3時間、再び学校で行われる「夜間学習」だ。全生徒が参加し、教員は予習・復習だけでなく、少人数制の基礎講座や発展講座など、生徒一人ひとりのレベルに合わせた綿密な指導で、個々の学力を徹底的に伸ばしていく。また、希望に応じて、土曜講座や放課後の指導も随時行う。
塾や予備校に通わず、慣れ親しんだ環境でいつでも勉強できるのは、全寮制ならではの大きな強みだ。もちろん、熱意とともに、すべての教員が、最難関大学に対応できる高い指導力を身に付けている。
初心を貫かせる
教育=共育=協育の理念
入学試験では、学力試験だけではなく、本人との面接を重視している。その際、「どんなものでもいいから夢を持ち、それに向かって、全寮制の学校で頑張り抜こうという明確な意志があることが最も大切です」と神原中学校長。
生徒は入学後、この夢を改めて「誓いのことば」に記し、校庭に建つ「秀明の塔」へ納める。困難に突き当たったとき、初心に返って意志を貫く勇気を奮い立たせるためだ。 |
もちろん、ホームシックにかかり、途中でくじけそうになる生徒もいる。こうした生徒もフォローし、初心を貫き、夢を叶える方向に持っていくのが、「教育=共育=協育」の理念。学校と家庭、教員と保護者が共に生徒を育てていくという、同校が最も大切にしている姿勢だ。
学校を信頼し、子どもが弱気になっても、保護者は同調せずに励ます。一方、学校は保護者の信託に全力で応える。教員が生徒一人ひとりに目配りし、くじけそうな生徒には個人面談や勇気づけで最善の方向へ導いていく。
また、校長自ら授業・面談の現場に立ち、保護者の連絡窓口となることで、必要に応じて、迅速に三者面談や本人との面談を行っている。
こうした学校と家庭の綿密な連携により、生徒は困難に打ち勝とうと努力し、精神的にたくましく成長する。
親代わりでもあった教員を慕い、同校を訪れる卒業生は多い。そんな時、必ず口にする言葉が、「寮のご飯を食べていってもいいですか」。6年間を過ごした寮は、卒業生にとってわが家も同然。医師国家試験の合格発表の直前にわざわざ学校を訪れ、インターネット上での発表を教員と一緒に見る生徒も多いという。「教師冥利に尽きます」と神原校長は感慨深げ。
全寮制の中高一貫校でなければなしえない理想教育が、全国トップクラスの進学実績を生み出す。そして、生徒のために一切の妥協をせず、全力を尽くしてくれる教員が揃う学校だからこそ、生徒も保護者も全幅の信頼を寄せることができるのだ。
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