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中学・高校受験:学びネット

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駒込中学校・高等学校

 
  国公立、早慶上理、GMARCHに82人 仏教的情操教育による気づきの成果
私学の存在意義は理念を語り、それを具現化することである。駒込中学校・高等学校の河合孝允校長はそうはっきりと言い切る。比叡山天台宗の教えをもとに心に基軸を持たせる教育を実践している。なすべき課題に気付いた生徒は自学自習に励み、結果として難関大学へ合格していく。偏差値40以下で中学校に入学した生徒たちの6年後の姿である。ひときわ教え方が優れているのではなく、友との共生の中で、自分に目覚めて伸びたと河合校長。理念教育の真髄を聞いた。

校 長: 河合 孝允
住 所: 〒113-0022 東京都文京区千駄木5丁目6番25号
電 話: 03-3828-4141
交 通: 都営三田線「白山」駅徒歩7分/東京メトロ南北線「本駒込」駅徒歩5分/東京メトロ千代田線「千駄木」駅徒歩7分
学生数: 中学校  297名
高等学校 1,227名 (2010.07.1現在)
ホームページ: http://www.komagome.ed.jp

 

三百二十余年継承の理念
一隅を照らす人間育成

 私学は組織体ではなく理念体。建学の精神を忘れて、どうして私学に存在意義があるでしょう。私学は公立の補完校ではありません。学校教育法第1条に定められた学校として公共性は担保されますが、公立と同質の教育を求められているわけではないのです。駒込中学校・高等学校の河合孝允校長は静かだが、熱を込めて、そう語った。

 理念体私学の改革課題とは何か。それを探るため、ここ15年ほど河合校長は私学関係者とともに勉強会を持ってきた。時代は小泉内閣が「聖域なき構造改革」を叫び、教育特区の名のもとに株式会社立の学校が開校した時期に重なる。

 加えて、既存の私学が理念を棚上げし、結果主義的価値観をもち、共学ブーム、制服ブーム、ITブームなどの流行に乗ることを競い合ってきた時代でもある。

 ところが、2009年になると、株式会社立の学校の開校は途絶えた。利潤追求を目的とする企業にとって、学校はその対象ではないということがはっきりしたからだと河合校長は見ている。それとともに一連のブームも去ろうとしている。

 私学は今一度、建学理念に立ち返り、それぞれが「夫子の道は忠恕のみ」と教育活動に専念することではないか。15年続いた勉強会で再確認した意義は大きい。

 さて、駒込学園の建学理念は、比叡山天台宗の教えに基づく「一隅を照らす人間の育成」である。昨今、宗教色を前面に出さない私学が増える中、同校では320余年歩み続けた仏教的情操教育を教育活動の柱として、明確に打ち出している。そして、それは一つの問題提起でもある。

 というのも、日本人はその大半が無宗教であると言われるが、実際は国家政策が無宗教であるに過ぎない。本来、八百よろずの神を信仰してきた日本人は、雛祭り、端午の節句、収穫祭、七五三などの宗教行事に親しみ、それらの信仰によって、帰属意識が満たされてきた。帰属には無意識のうちに自己のアイデンティティを確認させる役割があったといえる。自己に気付く間もなく、グローバル化した文明に放たれた子どもたちは、今、苦しんでいる。挙げ句、精神の不安定さが、いじめや不登校問題を引き起こしていると河合校長は分析する。

子どもたちの呻きに
示唆を送る教育の役割

 駒込高等学校は、修学旅行先をマレーシア、シンガポールとし、現地農家でホームステイを行っている。かつてイギリスの植民地であった両地は、日本の昭和40年代の暮らしを今に残している。不便不自由な生活の中で、生徒たちはそれまで知らなかった価値に気付く。そして帰国後、逆カルチャーショックで、不登校気味になる生徒もいるほどだ。これは生徒に呻吟(しんぎん)が起こっているためである。

 この呻きは、事象を「コト的」に観て自己投企する東洋文明と、「モノ的」に客体視する西洋文明との落差から生まれる。生徒は本来、東洋文明的な感性を持ちながら、いつの間にかアメリカナイズされた生活を余儀なくされてきた。ところが、修学旅行で不便不自由であっても、そこにある確かな価値に気付いたとき、東洋文明的感性が呼び覚まされ、二つの感性領域で葛藤が起こるためと考えられる。

 生活全般においても「モノ的」であることが、東洋人にとっては知らず知らずのうちに心にきしみを生じさせる結果を招いている。入試を「モノ的」に客体視すると、偏差値やテクニック一辺倒になりがちで、教員は教えることの、生徒は学ぶことの本来の楽しさ、喜びを無意識的に疎外してしまう。東洋と西洋の文明の狭間で、子どもたちの心は呻くことになる。

 ここに必要とされるのが、教員のサジェスチョンだと河合校長は言う。過去の伝統文化と新しい価値観の許容。それらを融合させるための「知の編集力」が求められているのである。要は、まず東洋的な文化文明をきちんと発信できるだけの自我を形成することである。その順序を踏んでこそ西洋的社会、そして世界にはばたき、何ごとかを為し得る人間が育つのだと。

異質の認知で得る
アイデンティティ

 同校では、夜間回峰行を盛り込んだ比叡山研修を実施している。回峰行は修験道約30キロを夜間に歩く修行で、途中、仲間と助け合い励まし合いながらの行々となる。そこに困難を互いに乗り越えていこうとする意思と切磋琢磨の意識が生まれる。

 同校においては特段に生徒間の共生意識が強く、卒業後もその結束力の強さが「古希の会」などに結実しているのは、こうした取り組み、校風の表れだろう。仏教の懐の深さは、異質なものを分離せず、認知してともに生きようとする点にある。また、異質を認知してこそ自我に目覚めることができるという点で、人と人とのぶつかり合いを大らかに見守る気風を保っている学校である。

 一隅を照らす。それは自らの世界と周りの世界がつながっているという感覚を呼び覚ます言葉。Light Up Your Worldと英訳すると伝わりやすいだろうか。グローバル時代を生きる人間ほど、自己への気づきとアイデンティティの確立が求められる。古くて新しい理念体私学が注目される時が到来している。

 
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