放課後の補習で全員の学力を底上げ
校長に就任して1年。奥村英治校長は少子化や経済状況の悪化により、これまで以上に生徒募集について努力する必要があると考えている。
「中学入試の受験者は、昨年より約2割程度減りましたが、高校入試では例年通りの募集ができました。埼玉県の入試制度変更の影響が多少あり、思ったより併願推薦の戻りが多かったと感じています」
そうした状況を踏まえて、「今後は中学の教育システムを変えていきたい」と語る。放課後、主要教科(数学・英語・国語)のプリントによる補習を実施。「生徒全員をMARCHクラスのレベルにする気持ちで、全体の底上げをしていきたい」と意気込む。特に英語に力を入れ、来るべき大学入試に向けて、準備を進めておきたい方針だ。
「私学に6年間通っていて、希望する進路に進めないのでは、私学としての役割を果たしていないことになります。家庭学習の時間が少なくなっている昨今、学校で自学自習の習慣がつけば、家庭でも勉強をするようになる。何か動機付けとなるキッカケを与えられればと思います」
早ければ22年度から導入していく予定だ。
「中学受験を経験した生徒は、大学も推薦ではなく、受験で入りたいと考えている生徒が多い。今のレベルからさらに上の大学へ、果敢にチャンレンジできるような環境を整えていきたいですね」
中高時代、強い意志を
持っていた生徒が夢を実現
中学、高校が一緒に行う部活動も多い同校では、先輩の姿を見て、刺激を受ける生徒も多い。そうした機会も勉強に取り組む動機付けになると、奥村校長は語る。
「ラグビーをやりたくて、明治大学に進んだ先輩を見て、自分も頑張りたいと思う。キャリア教育も実施していますが、このような身近な例が一番刺激になるようです」
先日、奥村校長が参加した同窓会。27歳になった卒業生たちに囲まれ、改めて感じたことは「中高時代に強い思いを持っていた生徒が、夢を実現している」ということだった。
「商社に入りたい、マスコミの仕事がしたい…。そうした夢を叶えていた生徒は、早くから明確な目的を持って、学校生活を送っていた生徒たちでした」
理系クラスだったが、数学が苦手な生徒もいた。ところが、今ではロケットを飛ばすためのシステムに関する仕事に就いていた。驚きつつも、これが帝京中学校・帝京高等学校の底力だと感じた。
卒業生たちは帝京の魅力について、「熱い思いが伝わる、先生方の人間性が魅力だった」と語ってくれたという。「点数が悪いからダメと決めつけるのではなく、『しっかりやらなきゃダメじゃないか』と励ましてくれた。その言葉に救われました」という卒業生の言葉に、教員の姿勢が伝わっていたことが嬉しかった。
「人間ですから、過ちを犯すこともある。生徒を叱るにも頭ごなしに怒るのではなく、諭す教育が大切。教育とは人間力ですから、その教師の持っている人間性が一番生徒に響くのではないでしょうか」
帝京で過ごした中学・高校時代の思い出は、かけがえのない糧となって卒業生の中に息づいている。 |
スポーツに打ち込む、医療に進む生徒を応援
近年、女子の入学者が増えている同校。高校の文理コースでは男女比が4対6と、女子の人数が男子を上回っている。中学全体でも1対1の割合に近付いており、共学校としての人気が定着してきている。
「帝京大学グループでは医療や健康に関する学部が多く、介護にも力を入れています。そのため、看護師など医療方面に進みたい女子が、高校から入学するケースが増えてきました」
元々、明るい校風を好んで入学を決めるケースが多いが、女子では全国レベルの野球やサッカーの応援を体験したい、という声もある。
サッカー、野球などの他には女子柔道にも力を入れており、サッカー、女子柔道については寮も完備。日常生活から指導をし、練習に打ち込める環境を整えている。毎年、女子柔道をやるために、中学受験をする生徒も数人いるほどだ。
また、近くにある「味の素ナショナルトレーニングセンター」で、日本を代表する強化選手のうち、卓球、体操選手が同校に通学している。
「私立学校としては本校が一番近くにあり、スポーツにも理解があるということで、生徒の受け入れを依頼されました。本校では試合時は公欠扱いにできますし、勉強時間の調整も行っています。そうした面を評価してもらえたと考えています。今度も依頼があれば積極的に受け入れ、スポーツ振興や地域貢献をしたいと思っています」
医療の道に進みたい、スポーツを極めたいなど、さまざまな夢を持つ生徒を多面的にサポート。そうした手厚い指導は、いつか自分の子どもの帝京に入学させたい、という思いにつながっていく。
「本校の良さは、文化祭をはじめ、学校行事に卒業生が自分の子どもを連れてやってきてくれるところ。毎年、『今度、うちの子どもがお世話になります』という声も多く聞かれます。いつまでも生徒から愛される学校でありたいですね」
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