すべての制度を一新した
新しいシステムの学校誕生
昨年度までの千葉未来高等学校から、文理開成高等学校に名称変更。さらにカリキュラム、校章、校歌、制服までも一新し、全く新しい高校として今年度4月から生まれ変わった。校名にある「文理」とは、文系・理系どちらの進学志望者にも対応できること、「開成」とは中国の古典の中に記されている『開物成務』に由来、個々の人間が自己を開拓し、その人としての務めを成すことを示し、今後はその名に恥じない教育を進めていくことになる。
最も大きい変化は、昨年までの総合学科を普通科として再編、特別進学コースと普通コースの他に、新たに医歯薬コース、大学進学コースを増設し、全日制4コースとしたことである。
医歯薬コースは難関私立・国公立大学の医学部や歯学部、薬学部への進学を見据えたコース。特進コースはそれ以外の難関国公立・有名私立大学への進学を目指す。初年度となる今年は、この2コースへの入学生は1年次には同じカリキュラムで授業を受け、2年次から各々の目標に向けて学習することになる。指導にはコース専任の教諭陣を配置。首都圏でトップクラスと呼ばれる高校や予備校、東京大学で教鞭を取る講師を招聘し、最高の学習環境が整えられた。今のところ、どの生徒も1学期中は無遅刻・無欠席・無早退という自己管理能力に長けており、目標達成に向かって体力・気力ともに溢れている状態だ。また、生きた英会話が学べるネイティブの講師も導入、卒業までには2コースの全員が、最低でも英検2級に合格するという指導目標も立てられている。今後、夏期講習や夏期合宿も控えており、彼らが中学時代に残した好成績が、どれだけ伸びていくのか、周囲の期待も高い。
一方、普通コースは、基礎学力の徹底や多様なカリキュラムによる資格取得などで、大学や短大、専門学校への進学、もしくは就職といった多岐に渡る卒業後の目標に対応する。このコースでは、クラブ活動にかけられる時間も多く、サーフィン部を始め、野球部や剣道、柔道、バスケットボール部、ボクシング部などのスポーツ系クラブが特に盛んである。中でも、太平洋を目前に臨む絶好のロケーションに恵まれた日本初のサーフィン部は、全日本選手権大会優勝や世界ジュニア選手権大会出場といった輝かしい戦績を持っており、遠方からの入部希望生も多い。通学圏から遥かに離れているため、学校附属の寮生活を送りながら、学業とクラブの両方で実力を磨く生徒もいる。また、レベルの高い講義を受けられる土曜授業や、専門の講師による小論文授業も実施。受講は希望制だが、普通コースを含む1年生、2年生の多くが出席しており、生徒の学習に対する意識の高さが伺える。
『知・心・体』を根幹に
本当の意味での個別対応を
文理開成高等学校が教育の根幹に置いているのが『知・心・体』の言葉。知識を増やし、体を鍛える。そしてそこに心の教育が重なれば、理想的な人間像が浮かび上がってくるのである。
「心の教育は、自分さえ成績が上がれば良いという自己満足的なものではありません。思いやりを持った豊かな人間性を育て、その上に知識と体力が兼ね合えば、真に将来社会で活躍できる人材となるでしょう」
そう語るのは今年度4月に就任した石川勝校長。神奈川県では有数の進学校である聖光学院中学・高等学校で合格実績アップに貢献し、その後もキリスト教系学校で教頭や校長補佐を務めるなど、延べ40年以上教育に携わってきた。その経験を活かし、新たな文理開成のために、まずは教員全員が生徒一人ひとりに対応した教育を行うように指示を出した。
当たり前のように思われている個々への対応だが、石川校長は教育を『オセロゲーム』にたとえ、その難しさを示唆する。生徒は日々、成長していますから、その日、その場面によって感情や態度が変化する。今が白でも、黒になり、白に返すオセロのように、100人いれば100通りの変化にいつも気を配っていく必要があるというのだ。そして、生徒の目標も最難関国公立大学から就職までと幅広いため、それをどれだけ叶えることができるかが実績となり、学校の看板になる。
「特に進学実績は生徒募集に大切な要素ですが、中高一貫校の生徒なら小学校高学年から受験というものを意識するのに対し、本校のように高校のみの学校に入学する生徒は、中学最終学年になってからやっと受験を意識し始める。この年数の差は後の大学受験にも響いてきます。それでも、生徒の自己実現のために、厳しさを乗り越えられるよう手助けすることができる学校にしていきたいと考えています」
現在、石川校長は月に一度のロングホームルームや全体集会を実施し、生徒たちの心の成長を促している。 |
さらに新たな企画を立て
広く認識される進学校へ
新しい進学校として世間に認知されるためには、3年目以降には、30校以上(中堅以上)の4年制大学へ進学実績を挙げ、その進学率が卒業生全体の30%を超える必要があると石川校長は語る。この場合、一人の生徒が重複して受験し、合格しても構わないが、全部で30校以上の大学であるというのが条件になる。明確な数字を出せば、社会は進学校として認識する。入学を希望する生徒の習熟度レベルも上がり、自然とハイレベルな大学への合格実績が挙がってくるのである。現在、進学校として著名な学校は、すべてこの循環がうまくできている学校で、少子化の中でも高い募集倍率を誇り、安定した学校運営を続けているのだ。
しかし、一期生である今年度の医歯薬・特進コースの生徒数では、全体の30%を達成するのには無理がある。進学率を挙げるには、普通コースからも4年制大学への進学を見込まなければならないが、普通コースの生徒の大半は他に進路目標を設定しており、中堅大学への進学は難しい。そのため普通コースと特進コースの間の層の習熟度レベルで、中堅大学を目指す生徒を獲得するコースとして、大学進学コースの設置を決定した。
「教育は机上で論じるものではなく実践するしかないものである」という持論を持つ石川校長。その理念の結晶となる新しい文理開成高等学校のさらに完璧な姿が現れるのを、多くの生徒や教育者が待ち望んでいる。
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