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中学・高校受験:学びネット

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実践女子学園中学校高等学校

 
  女性校長、細やかな視点で改革キャリア教育併行で進学にも期待
公立高校の校長経験を持つ松田由紀子氏が、実践女子学園中学校高等学校の校長に就任して4年目。地球規模の目標を掲げる一方、きめ細やかな視点で改革を推進し、話題を呼んでいる。中でも、松田校長の公立時代の研究にも通じるキャリア教育は、生徒の自己決定力を高め、進学実績にも好影響を及ぼしている。来春、認可予定のグローバルスタディーズクラス(国際学級)では、ハイレベルな授業と全国的にも珍しい中国語の履修が魅力だ。

校 長: 松田 由紀子
住 所: 〒150-0011 東京都渋谷区東1-1-11
交 通: 地下鉄、東急、井の頭各線「渋谷」駅より徒歩10分/地下鉄「表参道」駅より徒歩12分
学生数: 中学校  982
高等学校 891名 (2007.9.1現在)
ホームページ: http://www.jissen.ac.jp/

 

健全な社会維持へ使命を持って改革

実践女子学園中学校高等学校は、女子教育の先覚者である下田歌子によって108年前に創立された。明治中期にあって、欧米各国の女子教育の実情を、国費によって視察することを許された唯一の女性であり、時の内親王の教育係も務めた人物である。同校創立前は最上流階層の子女教育に従事していたが、下田は訪れた英国で、近代国家を支える女性の発言力の重要性を実感したことから、広く女性一般のための教育に取り組むこととなる。この時から、「堅実にして質素、しかも品格ある女性の育成」を理念に同校の教育が始まる。

創立者が今に残した「品格、高雅、自立、自営」の4つの言葉に集約される建学の精神は、同校を訪れた者なら、その生徒の姿に垣間見ることができるだろう。中でも下田が特段のこだわりをもって頻用した言葉が「自営」である。「自営」とは、優れた社会を創り上げるためには女性の発言力が欠かせないが、その発言力を担保するための経済力、技能を身につける必要性を説いている言葉で、同校の教育方針の根幹である。就任から4年目を迎える松田由紀子校長は、さらに家庭経営力も「自営」に含まれるという考えから、健全な社会の維持には、いかに女子教育が重要であるかを説く。

さて、同校は中学校から大学院までを併設する総合学園だが、それゆえ、中高一貫教育を終えた生徒の多くは、かつては併設大学への進学者が多かった。また、渋谷から10分という絶好の立地や、多くの卒業生の子女が入学する学校として、安定した入学者数を確保してきた。ところが、社会的ニーズは新しい魅力作り、特色作りを行う学校へと移り変わり、同校への外部評価が、一時、相対的に落ちたことは否めない。外部評価が下がれば、学力低下を招くのは当然の理であり、校長就任時の改革目標は明確だったといえる。そこで、最初に行ったのが教育活動の分析である。松田校長は半年をかけて出した分析結果を全教員に伝え、「中高一貫学力向上推進委員会」を立ち上げた。また、全教員がフリー・トーキングで意見を出し合う場を設け、学力改革の具体的取り組みを挙げていったのである。

キャリア教育の併行実践で
進学実績が上向く

まず第一に、家庭学習の量を増やすことを考えた。教室内の連絡用ボードに宿題や小テストの予定、範囲などを示し、その日の家庭学習で何をすべきかという自覚を促すとともに、教員側がバランスよく課題を出すためにも活用する。毎朝の授業開始前には10分程度のプリント学習を習慣化させるなど、細やかな実践を積み重ねる手法がとられている。

その上で、次に行ったのが教材検討である。英語はZ会のトレジャーを採用、数学は検定教科書に副教材をプラスして、十分な習熟が得られるように工夫を重ねた。理科は物理、化学、生物、地学について独自プログラムを作成し、効率的かつ定着度の高い授業を実施している。また、中高一貫のメリットを最大限に生かすため、全過程を高校2年次までに終了させ、高校3年からは演習を中心とした入試対応スタイルの授業へと特化させている。

しかし、こうした学習的負荷の強化だけでは学力向上には結びつかないと考えた同校では、キャリア教育を併行実践することで、生徒の進学意欲を上げる方策に出た。「現代社会で解決が求められている福祉、環境、情報、国際化といった分野に関して、どのようなことに興味を持つのかという自己認識を持つ。さらに社会の現状を理解し、将来の職業観を養うことで、自己決定力が育まれ、結果として、着実に学力の質が高まっています」と松田校長。この方策には、神奈川県立高校の校長時代、総合学科の立ち上げに際し、キャリアデザインに先進的に取り組み、成功例を研究した松田校長の経験が生かされている。

加えて、それまでは実施されていなかった全国模試を実施し、夏休み、春休みを短縮することで授業時数を増やし、学校行事の日程も効率的に見直した。その結果、晩秋から冬にかけての学力向上期を活性化するなどの方策で、中学校入学時の偏差値も回復し、全学年で生徒の成績が上昇傾向にある。

今春の大学合格実績を見ても、昨年に比べ、いわゆる早慶上理、MARCHGといった大学で実績を上げた。松田校長は「今後は国公立大学合格に向けたカリキュラムを充実させたい」と、さらに自身にハードルを課す。

グローバルスタディーズ(国際学級)と
今後の学校運営方針

来春に開設予定のグローバルスタディーズ(国際学級)は、同校が目指す地球規模の人材育成の観点から、ハイレベルな英語教育を中心に、今後、さらにニーズが高まる中国語を必修とするクラスである。高2終了時にはTOEFL550点(英検準一級)取得を、中国語は日常会話以上の実力を目指す。

「このクラスは英語力を伸ばして難関大学の進学実績を伸ばそうというものではなく、将来はリベラル・アーツのアメリカなどの大学へ進学し、世界中からの学生と切磋琢磨できるような生徒を育てたい」と話す松田校長。まさに、創立者・下田が目指した、世界に通用する女性の育成という考えが受け継がれている。

募集定員は35名で、帰国子女枠を設定する。昨年初めて一般入試で15名の同枠を設けたところ、初年度より64名の応募があり、帰国子女教育に対する信頼は厚い。その教育方針は、異文化で培った感性をいかに大切に育み、将来の社会参加に活かしていくかという考え方に則り、生徒の海外での生活経験を最大限尊重するというもの。

このような一人ひとりの生徒の個性を重視する考えは、そのほかのすべてのクラスにおいても同様であることはいうまでもない。中等教育に至るまでの学校および家庭教育では、個性伸長傾向であることから、現在、中等教育においても子どもの気質の変化に対応することが求められている。同校でもそうした個性豊かな生徒によりきめ細やかに対応するため、これまでの募集定員320名(8クラス)を240名(6クラス)に減員する。

女性管理職の視点によって、数々の改革に着手し始めた実践女子学園中学校高等学校。改革の成果は水面下で徐々に現れつつあるが、今後、大きく開花するか期待がかかるところだ。最後に、松田校長は女子校の学校経営が厳しいといわれる中にあって、「欧米で中等教育期に成果を挙げているのは男女別学。女子校の方がはるかに子どもの将来に備える教育ができる。建学の精神に忠実であることで、最後まで残る女子校の一つ」と言い切った。

 
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