コロナ禍でも活躍したICT設備
明るい色調の真新しい新校舎は遠くからでもよく映える。道路を挟んで北側にはかつて旧校舎があった敷地。この7月1日からはグラウンドとしてオープンし、改装された総合体育館にはエリアを拡大した柔道・剣道場、卓球場が設置された。また、更衣室や各部室、温水プール、シャワールームに加え、音楽部用の防音の部室なども設置された。第二体育館も工事が終了し、トレーニングルームのトレーニングマシーンがこれから入る予定だ。最新の設備に生徒たちのモチベーションもあがりそうだ。
今回のコロナ禍で、学生全員が揃ったのは6月15日。10月に開催される予定だった130周年記念式典は来年2021年3月に延期し、社会状況を鑑みながら開催に向けての調整を行っている。そんな中でも、昨年完成したICT設備を充実させた新校舎は、今回その力を発揮した。
毎朝の朝礼は中学・高校合わせて全員でZoomを利用し行われた。授業は教師がそれぞれ工夫し、自作の動画配信、Zoom授業を実施するなど奮闘。学校祖である法然上人を偲ぶ式典「御忌式」は、校長先生の動画を全クラスに配信した。殿井副校長は講堂に全員が集い式典に臨むことの大切さを説きながらも、ICT設備の便利さに助けられたと言う。
この全館に設置された電子黒板付きプロジェクターには、デジタル教材「みらいスクールステーション」が導入され授業の効率化に役立っている。動画やゲームの要素などを授業に取り入れ、生徒たちが積極的に学びを体験できるよう配慮している。
学習支援ツールとして導入中のシステムは、中学はスタディサプリとClassi、高校はClassi だ。生徒の端末に宿題やプリントなどを配信、家庭学習の進捗や集計を管理しながら、家庭への情報発信も兼ねる。今回は期間中にClassi のサーバーがダウンするというトラブルもあったが、高校では今後に備えてGoogle Classroom を予備で置く準備も進めている。
また、今後ますます必要とされるアクティブラーニングについては、考案者の羽根拓也氏が同校出身ということから、同氏の研修を代表の教員が受け、より効率的な方法を毎年刷新、学内で共有している。
生徒たちの未来を見つめるコース編成
山縣 真平 校長
毎年入学者が伸びている中学校では、今年110名を迎えた。6年一貫教育を軸とする「特進コース」と「Gコース」があり、いずれも基礎学力と人間力を育成するカリキュラムだ。
同校では中学から英語教育を重視、英語学習時間7時間のうち3時間をネイティブ講師の授業とするほか、英検・GTEC対策ゼミなども受講できる。3年生のシンガポール・マレーシア海外研修のほか、グローバル体験プログラムなど学びの機会は多い。
高校は難関国立大学を目指す「パワーコース」、国公立大学を目指す「英数コース」、生徒の夢の実現に特化した「プレップコース」の3コースがある。いずれも夏休みを中心に、オーストラリア、カナダ、フィリピンのセブ島、イギリスなどの海外研修を準備していたが、今年に限っては夏休みに授業日数確保の問題が出ているため、見合わせる予定だ。
プレップコースでは一昨年より、推薦入試が終了した生徒全員を対象にエンパワーメントプログラムを開催。期間は3日間、一人の留学生をリーダーとした8人ほどのチームをつくり、テーマを決めて様々なセッションや体験をする。最終的には3日間で学んだ結果を生徒が英語でプレゼンするというものだ。これにより大学入学までのモチベーションが高まっているという。
一方、パワーコース、英数コースでは、生徒が自ら課題を掘り下げていく探究型活動をさらに充実させる。現時点のテーマとしては、未来に向けての世界的指針であるSDGsをどう扱うか。また、上宮独自の「成長のものさし」である「上宮ルーブリック」のより深い考察があげられる。
また、高校では希望者が全員利用できる有料ゼミを、通年破格(10分100円)で提供している。ただし現在は新型コロナの影響を受けて、高3生だけ無料で開催中。2学期からは全学年での開催予定だという。大学合格講座、オンライン英会話、英検対策講座など、講座の種類も充実。学内で大学受験対策ができるため予備校に通う必要がなく、特に女生徒の保護者には安全面でも好評だ。講師も様々な予備校の中堅の講師で固めており、安心して学びを深められる。
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生徒に寄り添う進路指導と
上宮ならではの人間教育
進路指導の充実も上宮高校の特長だ。特にプレップコースでは高校1年の各学期ごとに関西大学などの大学を訪れ、2年では連携大学での具体的な学部・学科の研究を行う。さらに3年では連携大学を受験するか否かで、進路指導がかなり詳細となる。
もちろん個々の生徒と徹底的に向き合う姿勢はパワー・英数コースにおいても同じ。6月の現時点で、職員室の3年生担任の机の横には、常に相談に来た生徒が座っているという。ちなみに今年の全体の進学実績では、国公立大41名、関関同立大91名と安定の数字をあげている。
生徒の人間的成長の指針となる「上宮ルーブリック」は、校訓の「正思明行」を具体化した一.掃除、二.勤行、三.学問の学順について、どこまでできているかを生徒自身で顧み、5段階で評価するというものだ。点数にこだわるのではなく、自分自身を見直すということの重要性のほうが大きいと殿井副校長は語る。
部活動では、卓球・ソフトテニス・柔道・剣道がインターハイの常連だ。加えて最近めざましく伸びているのは書道パフォーマンス。テレビでもよく取り上げられ、この部を目指して上宮へ入学する生徒も出てきたという。
新しい時代に向けての最新の教育と、古来からの人間成長を促す大切な教え。これらを踏まえた同校の挑戦が、真のグローバル人を育てていく。
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