共学と別学のメリットを取り入れた
ユニークな「男女併学」が強み
新型コロナウイルス感染予防のため臨時休校のまま迎えた新年度。帝塚山中学校高等学校では、学校での時間割に沿ったオンライン学習を実施した。生徒たちが家庭のパソコンから動画教材や課題にアクセスして学び、学習と生活のペースを維持できるようにとの取り組みだ。
池辺校長は「動画教材は本校の教員たちが製作しました。手探りの作業でしたが、今できることを考え、頑張ってくれました。生徒たちには、こんな時だからこそ自律心やITリテラシーを高め、また家庭の中での役割を見つけて実践してほしいと呼びかけています。ピンチはチャンスです。この経験が今後に生きる時が必ず来ると思っています」と話す。
中学入試で2000名前後の志願者を集める中高一貫教育の人気校であり、東大・京大をはじめ国公立大、難関私大、大学医歯薬学系学部に多くの合格者を出す、奈良県内でも有数の進学校。生徒の意欲を引き出す教育方針の一つに、独自の「男女併学」がある。
これは授業は男女別、クラブ活動や学校行事は男女一緒に行うユニークな制度だ。同校では中学受験時から「男子英数コース」、「女子英数コース」、「女子特進コース」の3コースに分かれており、さらに男子英数コースには「スーパー理系選抜クラス」と「英数クラス」、女子英数コースには「スーパー選抜クラス」と「英数クラス」がある。
「この年代の男子と女子は、学習面では興味や関心を持つところが異なるので男女別に指導する方が効果的です。学校生活の面でも、中学校の男子などはまだまだ友達同士でじゃれ合いたい年頃で、女子の目がない方が気楽に過ごせるようです(笑)。また女子は男子に頼らず、自立心や積極性を育んでいきます」と池辺校長。
男子のスーパー理系選抜クラスと女子のスーパー選抜クラス、また男女の英数クラスは高2から男女合同授業になる教科もある。これが互いに良い刺激になり、励まし合い、競い合いながら大学受験に向けてのペースを確立していくという。
なお、先述のクラス・コース分けは中2進級時と高校進学時、高2・高3進級時に、学力や希望進路に応じて変更することができる。
クラブ活動、国際交流
豊かな経験がグローバルな
帝塚山人を育てる
進学校としての実績を誇る一方で、国際交流やクラブ活動も盛んだ。
「中高の6年間は自分づくりの大切な時期。仲間とともにクラブ活動や学校行事にしっかり取り組みたいという生徒は多いです」
中学校の3年間は、全員が何らかのクラブに所属することになっている(高校は任意)。ギターマンドリン部、放送部、高校数学研究部、陸上部などは全国大会常連の強豪だ。理科部ロボット班は世界大会出場実績を誇る。海外の学校を互いに訪問し合い、演奏会や交流試合をするなど、クラブ活動での国際交流も活発だ。
そうした折には生徒同士、英語でコミュニケーションをとっている。同校ではネイティブ教員による英会話やライティングの授業があり、中1・中2の英語暗唱大会、中3〜高2の英語スピーチコンテストを開催するなど、英語教育に力を入れている成果が発揮されている。
「語学力はため込むだけでなく発揮しないと、本当の力にならないと考えています。英語で相互理解を深め、人前で発表する機会を数多く用意しています」と池辺校長が言うように、同校には多彩な国際交流プランがある。
シンガポールの姉妹校ACJCとは、互いに招待し合う交流を25年以上続けている。中学3年の海外研修ではシアトルで語学研修やホームステイ、キャンプを体験する。高1が参加できるエンパワーメントプログラムは、ハーバード大学やカリフォルニア大学の大学院生と英語でディスカッションやプレゼンテーションを行う、国内にいながらの留学体験のような機会だ。
そしてグローバルキャリア教育の仕上げとして、高2ではボストンに約10日間赴いてのグローバルアカデミックプログラムがある。現地の大学生とディスカッションやプレゼンテーションを行うのだ。
「受験だけが目的の勉強は痩せたものになるのではないでしょうか。伝えられる、わかり合える喜びを体験することで自発的に学ぶ意欲を高めてほしいですね」
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キャリア教育で未来をデザイン
熱意ある学習指導で進路を実現
同校の学習・進学指導は単なる受験対策ではない。大学見学や大学出張講義、卒業生を含めて各界で活躍する方々を招いてさまざまな講演会や体験授業などを催し、憧れの大学や学びたい学部、その先の将来像をイメージできるよう導いていく。大学合格はゴールではなくキャリアの始まり、という方針だ。
「将来の目標を持つことができたら何のために学習するのかが明確になります。一人ひとりの夢をかなえるのが本校の進学指導です。合格者数を増やすために特定の大学に誘導したり、いくつも出願を勧めたりすることは行いません」
2019年度は東大・京大をはじめとする国公立大学に182名が合格。関関同立には296名。医歯薬保健獣医系には国公立32名、私立206名が合格した。この実績を支えるのは中高6年間にわたる、先生方の親身な学習指導だ。休み時間や放課後、職員室前にデスクを置いた「質問コーナー」で苦手科目や難問の学習相談に対応する。中には進路の迷いや心配事をうち明ける生徒もいるようだ。
また、放課後の自習室では多くの生徒が勉強に励む。先輩が努力する姿を見て、後輩たちも能動的な学習習慣を身につけていくという。
生徒が興味や探究心を広げられる設備も充実。グラフィックデザインやプログラミングができるコンピュータ室、天文台、室内温水プール、理科専用の実験室・講義室が8室、茶席を設けられる和室などを備える。恵まれた教育環境と、明るく質実な校風が人気を集め、近年の中学受験には約2000人が出願する。
「やりたいことは何でもできる、誰もが輝ける環境があります。この学校で自分を信じて、自らを鍛えてほしい。そして常に自らで考え、判断し、責任を持つ、自立した人間として巣立ってほしいです。そういう先輩や教員たちがこの学校をつくってきました。私たちもこのイズムを受け継いでいきたいと思います」と池辺校長は語る。
確かな伝統を礎に、新世代の帝塚山人が育つ学び舎だ。
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