グローバルとリベラルアーツをキーワードに
描く教育のグランドデザイン
𠮷田 和史 教頭
甲南は「フロントランナー・コース」と「アドバンスト・コース」の2コース制。昨年度から策定された6つの教育ヴィジョン(①心身ともに健康で豊かな人間性を育む②個々の秘めたる才能を引き出す③教養豊かな人材を育成する④主体的に行動する人材を育てる⑤チームワークを育む⑥グローバル社会に貢献する人物を育成する)のもと、多彩なプロ グラムを展開中だ。
「フロントランナー・コース」は知的探究心と高い志を掲げ、目標とする研究領域が学べる大学へ進学するのを目標としている。このコースには2つの〝LAB(ラボ)〞がある。1つ目のSCIENCE LAB(サイエンス・ラボ)では実験・実習に取り組み、その結果を考察しレポートを作成。科学的な思考力を身につけ将来の進路を探っていく。2つ目のGLOBALLAB(グローバル・ラボ)では、各テーマごとに独自教材や専門家を招聘。世界や平和、環境について深く学び、多様な価値観や論理的思考力を身につけ学びのモチベーションを高めていく。いずれも中2から中3にかけて実施するプログラムだ。フロントランナー・コースでは、高2の際に理系と文系に分かれ、理系は国公立大学の医歯薬理工系、および私立大学の医歯薬理工系、甲南大学理系進学を目指す。文系は国公立大学文系、難関私立大学文系、甲南大学文系を目指す。
「アドバンスト・コース」は、キャリア教育に力点を置きながら、国際教養と広い視野、コミュニケーション力を有した人材を養う。このコースには中3から始まるグローバル・ファウンデーション(国際教養プログラム)と高2・3から始まるグローバル・スタディ・プログラム(GSP)が用意されており、海外大学や甲南大学文系、私立大学文系進学を目指す。
将来自分がなりたいキャリアへと導く
2コースの学び
山内 守明 校長
グローバル・ファウンデーション(国際教養プログラム)は、高2からのグローバル・スタディ・プログラム(GSP)を希望する生徒を対象とし、その基礎を築くプログラムだ。日々の学習、一般教科とは別の独自授業と行事、協働的な学びの機会を通して英語力・国際的教養とともに主体性やコミュニケーション力、リーダーシップを育む。
甲南では、「世界に通用する紳士」を育成するため、探究活動とリサーチフェアでの発表をカリキュラムの一環とするグローバル・スタディ・プログラム(GSP)を教育の柱としている。これは中3からの4年間一貫教育を行うプログラムで、国際人としての資質を磨き上げていくものだ。高2から高3の間に3ヵ月から1年間の留学を中心にすえ、国語・英語・社会・総合学習のユニーク授業と、社会と教室をつなぐ様々な行事・課外活動からなる。
2019年12月、甲南高等学校・中学校で『甲南リサーチフェア』と題する研究発表会が行われた。発表者は高2と高1のGSPの履修者である。高2はSDGsに関連した自由テーマでプレゼンテーションし、高1は防災・復興に関連したポスター発表を行った。いずれも探究活動の中間発表という位置づけであり、アドバイザーとして大学教員、上級生や下級生が参加し、質疑応答を通して評価をフィードバックする。生徒たちは、その結果を反映させながらブラッシュアップを重ね、最終的に論文を書き上げる。
「高2だった発表者たちは今年度高3となり、約3分の2の生徒がAO・推薦入試で合格を達成しました。早稲田、慶應義塾、上智、立教、関西学院、立命館、同志社、神戸大、イギリスのU C L(University College London)、King's College London 、SOASUniversity of London、スコットランドのUniversity of Edinburgh、オランダのErasmus University Rotterdam、ベルギーのKU Leuven、カナダのThe University of Toronto など海外への大学合格も増えています。生徒たちが自ら課題を設定しリサーチを進める過程で、真に〝やりたいこと〞を見つけ進路選択する。その成長ぶりには目を見張るものがあります」と教頭の𠮷田和史先生は語る。
また、フロントランナー・コースも三度にわたる学習合宿、数多くの夏季休業中の特別授業、そして国公立大学に向けた二次対策授業を行い、国公立大学を志望する生徒に対して、積極的な支援を行ってきた。その結果、名古屋大学医学部をはじめとして、数多くの生徒が大阪大学、神戸大学などの難関国公立大学に進学した。
|
自ら思考・判断・表現する力を身につける
先進のICT教育
2019年度4月から中1、高1・2の「フロントランナー・コース」「アドバンスト・コース」すべてのクラスで1人1台のiPadを持ち、学習に活用している。学習支援アプリとして『Classi』を早期に導入し、生徒とのコミュニケーション、課題配信、アンケート調査、WEBテストなど様々に活用している。
さらにはクラウド型の学習アプリ『MetaMoJi Classroom』が学びのツールとして使われている。先生から配信されるワークシートで個々またはグループで学習したり、自分たちでレポートや作品を作成したりすることができる。1つのワークシート上で同時に複数の生徒が書き込みや添削をすることも可能で、受信一方の授業ではなく、双方向型の授業が展開されている。「21世紀を生きる生徒は学校で知識や技能を習得するだけでなく、デジタルツールを用いて、自ら思考し、判断し、表現する力を身につけ、主体的に多様な人々と協働する力が求められています」と𠮷田教頭は言う。
グローバル・スタディ、グローバル・ファウンデーションのクラスでは、iPadの代わりに生徒の持ち込みノートPCも活用している。SNS型eポートフォリオ『Feelnote』を用い、セミナーやフィールドワーク、ボランティア活動など校内外での自らの活動を文章だけでなく写真やファイルを添付して記録。仲間同士でそれらを共有し、自身の学びと成長を示すポートフォリオを完成させている。
「本校のICT教育は常に先進的取り組みを心がけています。それらを駆使し『多様な進路実現』と『国際社会で活躍・貢献できる人材の育成』をキーワードに、21世紀の新しい学力観に基づいた教育を展開してまいります」と𠮷田教頭は語った。
|