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中学・高校受験:学びネット

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大谷中学校・高等学校

 
  今春、高校にグローバルクラス誕生
キーワードは模擬国連・留学・人間力
 学校法人真宗大谷学園が運営する大谷中学校・高等学校。明治8年の創立以来、144年の歴史をもつ京都の伝統校である。時代に合わせた変遷を繰り返すも、教育において常に先進的な取り組みを行ってきた校史がある。それは、親鸞聖人の言葉からとられた「樹心」という学校理念が脈々と息づいている証である。そして今春、高校のバタビアコースに、「グローバルクラス」が開設された。その誕生のルーツをたどり、伝統と革新が融合する同校の魅力に迫った。

校 長: 飯山 等
住 所: 〒605-0965 京都市東山区今熊野池田町12
電 話: 075-541-1312
交 通: JR奈良線、京阪本線
「東福寺」駅より徒歩5分
生徒数: 307名(中学校)
1,623名(高等学校)
ホームページ: http://www.otani.ed.jp/

 

創立以来の変わらぬ人間教育で
学校が安心していられる時間・空間に

 JR・京阪「東福寺」駅より落ち着いた東山区の町並みを歩くこと5分、交通至便の通学環境にある大谷中学校・高等学校。本校の学校理念の「樹心」は「心を弘誓(ぐぜい)の仏地(ぶつじ)に樹(た)て」という親鸞聖人の言葉(「教行信証」)からとられている。「私たち一人ひとりが大きないのちの働きかけによってこの世に生をうけ、生かされているという基盤に立って、自他のために精一杯生き切る人になろう」という想いが込められた学校理念である。

 なにより、学校で生活する「今、ここ」が安心していられる「時間・空間」となることを大切にしてきた。この「樹心」のコンセプトを現代風に読み替えて、最近では「TO BE HUMAN(人となる)」という教育目標を掲げている。

 本校の個性を大切にする校風は、広く社会から「大谷らしさ」と支持されている。教育において教師と生徒は上下関係にあるのではなく、お互いが共に成長するという意識をもって尊重し交感する存在であることが、「大谷らしさ」の根底にある。学園祭は企画から運営まで生徒が主体となって執り行い、ホームルームの時間枠を超え、討論し協力しあう。本当にやりたいことに取り組めるのは、教職員の見守りと的確なサポートがあってこそだろう。

 また、教育の先進性を示すものに、1960年に導入した「バタビアシステム教育」がある。バタビアシステムとは、1 8 8 0 年代にアメリカのニューヨーク州バタビア市の学校で始められた授業の方法で、授業中の教室に2人の先生がいるのが特長。科目を教える先生以外に、クラスの担任の先生が生徒にわからないところや質問はないかと目を配ってくれる。戦後長らく社会・経済が混乱し、日本の教育界も混迷するなか、生徒が安心して授業が受けられるこのシステムを日本で初めて取り入れたのが同校で、この教育システムは今も中学校で受け継がれている。クラブ活動も活発で、文武両道を高いレベルで実現していることも魅力である。そんな人間教育のあり方が受験生とその保護者の注目を浴び、ここ数年の志願者数の増加には目を見張るものがある。

国際理解教育に特化して
グローバルクラスが始動

飯山 等 校長

 大谷高校は4つのコース・クラス編成になっている。バタビアコースには、難関国公立大学への進学を目指す「マスタークラス」、難関私立大学・国公立大学への進学を目指す「コアクラス」、今春開設された「グローバルクラス」があり、そして、学業とクラブ活動を始めとする課外活動との両立を目指す「インテグラルコース」は現役での大学進学を目標とする。

 留学はカリフォルニア大学デイビス校のサポートを受けて、実施する1、2年の各年度末の3月にそれぞれ4週間、ホームステイ先で日本文化を積極的にアピールするなど、交流を深める。グローバル教育のそれぞれの専門分野の先生が、専門性の高い授業を展開し、生徒が国際的な視野・価値観を得て社会に出ていくことを目標にしている。また、「模擬国連」を授業に採用しているのも大きな特長だ。この取り組みを通じて、異文化への興味・関心を高めて理解を深め、さらに自分の意見を発信する力を養うと同時に英語力もアップさせるという。

 模擬国連は、参加者が実際の国際会議のシミュレーション(模擬)を行うことにより、国連や国際政治のシステムについて、また国際問題や国家の対外政策決定力がいかに働くかを学習する目的で実施される。発祥地はアメリカだが、日本では1980年頃から大学を中心に授業やサークルで取り入れられるようになり、今では、高校や中学校などでも実践する学校が増えている。しかし、模擬国連は中高においてはクラブ活動などの課外活動で取り組む学校がほとんどで、同校のようにカリキュラムの一環として、学問的見地で取り組むことはめずらしい。

 グローバルクラスで授業を担当している林 陽樹先生は、「もともと模擬国連は、本校に8年前に発足したGSI部が活動の中心として取り組んできました。私はGSI部の顧問ですが、これからはクラブとクラスが一体となって、模擬国連活動を盛り上げていきたいと思っています」と話す表情は明るい。

「グローバル」を楽しく学ぼう!
校外に呼びかけ仲間を増やす

 林先生は幼少期をニューヨークで暮らし、帰国して高校生の時に模擬国連に参加。大学生の時にカンボジアのゴミ山で暮らす子どもを目の当たりにするという経験をもつ。寄付をするのではなく白い靴を届けたところ、初めて靴を履くという子どもの顔がパッと明るく輝いた。その瞬間、林先生の人生観が変わったという。世の中にはお金で解決できないことも多くあるが、英知を集めれば現実を動かすことができるかもしれないと。

 「本校にご縁をもらった時に当時の記憶がよみがえり、模擬国連に取り組む活動をしたいとGSI部を設立しました」と林先生。そのサポート役を買って出たのが、同校の卒業生で、今年度から非常勤講師を務める中澤航佑先生だ。「模擬国連の取り組みをする仲間を増やし、楽しく、積極的に『グローバル』を学んでいきたい」と声を揃える。

模擬国連参加に向け一体となり
切磋琢磨した時間が信頼関係を築く

 GSI部員20名が参加した「第29回関西高校模擬国連大会」の一部を見学することができた。大会は6月19日から3日間、国立京都国際会館で開催された。参加校は11校で参加人数は266名。総会の議題は、「5歳未満の子どもに適切な栄養を確保する」「12歳未満の子どもに初等教育を提供する手段」「家庭の生活水準を向上させる」の3つで、7ヵ国(ニュージーランド、パナマ、インドネシア、マリ、エチオピア、フィリピン、ノルウェー)のいずれかの大使に任命された発表者が、テーマに沿った自国の政策をプレゼンテーションする。

 大会2日目の昼休みに部長・副部長(2名)、次期部長・副部長(2名)の6名に集まっていただいた。3回以上の参加経験をもつベテラン揃いで、「過去の反省点を踏まえて発表だけでなく質問の回数も増やし、積極的に参加したい」と異口同音に抱負を語ってくれた。

 議場では司会進行、プレゼンテーション、質問、回答はすべて英語で行われる。積極的に挙手する生徒、円陣をつくって討論する姿などが頼もしく映る。引率する林先生も生徒のサポートに大わらわである。

 後日、同校で行われた模擬国連の反省会にお邪魔し、部員の声に耳を傾けた。忌憚のない意見が交換され、先生方の熱のこもったアドバイスが飛び交う。会議当日までの長い準備期間を一緒に切磋琢磨してきたという信頼関係を垣間見た気がした。

模擬国連でスピーチをした
GSI部員へインタビュー

林 陽樹 先生

●山本 陽央里(やまもと ひおり)さんバタビアコース・コアクラス3年/GSI部部長/ニュージーランド大使となってスピーチ(参加回数11回)

 原稿の内容が頭に入っていたので「読む」ということはありませんでした。周りが「なるほど」というような感じで頷いてくれるのが目に入り、安心しました。世界の問題を解決したいという意識を同じ熱量で持つ仲間が集まって話し合える、こんな楽しい体験ができるのは模擬国連ならではです。大学では政治学を勉強したいと思っています。

●浅井 治樹(あさい はるき)さんインテグラルコース3年/GSI部副部長/ノルウェー大使となってスピーチ(参加回数8回)

 参加回数を重ねるごとに緊張感は薄らぎました。しかし、2回行ったスピーチのどちらも原稿を読んでしまった箇所があり力不足を感じています。また、自分がいかに恵まれた国で生活をしているかがわかりました。将来は少しでも人の役に立てるようになりたいです。模擬国連を経験することは、自分の財産になるし、生き方まで変わってくると思います。

●花﨑 萌香(はなさき もえか)さんバタビアコース・コアクラス3年/GSI部副部長/マリ大使となってスピーチ(参加回数8回)

 意見を伝えたいという気持ちが強すぎて、そのプレッシャーに押しつぶされてしまいました。8回の経験を積んでもやはりスピーチは難しいなと思います。今後の課題として生かしたいです。また、ネイティブの先生にスピーチ原稿を見てもらい、聞く人に誤解を与えない流暢な英語の言い回し方を学ぶことができ、とても勉強になりました。

●埴田 康介(はにだ こうすけ)さんバタビアコース・コアクラス2年/GSI部次期部長/インドネシア大使となってスピーチ(参加回数3回)

 自分の意見に耳を傾けてくれる人がいる、些細な疑問にも真剣に答えてくれる人がいる、それが模擬国連の魅力だと思います。大会参加の準備として報告書を読んで予め質問を考えるのですが、それが日常でも習慣になっています。例えば、授業の内容も聞き流さず、「どうしてそうなるんだろう?」という意識が働き、勉強が面白くなりました。将来は海外の映画祭に参加できるように英語力を磨きたいです。

●深谷 夏芽(みたに なつめ)さんバタビアコース・マスタークラス2年/GSI部次期副部長/ノルウェー大使となってスピーチ(参加回数5回)

 模擬国連は経験してすぐに成長できるものではないことがわかりました。失敗を重ねて徐々に改善し、「1年前と比べてここが良くなった」と、地味だけれど確実に成果が感じられる取り組みだと思っています。これは実際に体験しなければわからないことなので、ぜひ活動に参加してください。

●恒松 尚文(つねまつ たかふみ)さんバタビアコース・マスタークラス2年/GSI部次期副部長/バングラデシュ大使となってスピーチ(参加回数5回)

 最初はグループワークや他校との交流があっても主体的に行動できていませんでしたが、徐々に他人まかせにしないで意見を言えるようになりました。また、大使となった国の情報を詳しく知ることができたことも収穫です。英語で討論することはとても貴重な経験です。そして、自分の意見が通った時には大きな喜びを感じることができます。ぜひ、一緒に学びましょう。

●林 陽樹(はやし ひろき)先生英語教師・GSI部顧問

 参加するたびに生徒の成長を感じています。また、自分も成長過程にいると実感しています。人にはそれぞれの国際観がありますが、これからも多様性を受け止め伝え合う仲間を増やしていきたいと思います。それが私のある意味の国際貢献となっていれば嬉しいです。

 
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