土曜日のスクーリングのほか
自由登校日には学び直し授業も
長瀬 達也 教頭
通信制課程で学ぶ120名のうち、ほぼ半数が中学からの新入生、もう半数は他校からの転入生だという。
「転入してくる生徒の多くは、前の学校で友達や先生との人間関係のトラブルで不登校になったり、進学校に入学したけれど学校になじめなかった子たち。本来、学習意欲があり、大学進学を目指す子もいます。一方、中学から入学してくる生徒は中学時代から不登校気味で、まだ学習能力を発揮できていない子が多い。中学の学び直しから始める必要があります」と長瀬教頭は言う。
また、起立性調節障害という自律神経の不調で、朝起きられない、だるいといった症状のために学校を休みがちだった生徒も入学している。この病気は以前は怠慢だと思われていたが、思春期に多く、成長とともに治ることがわかってきた。
不登校の原因や学習進度がそれぞれ異なる生徒たちを一人ひとりを見守り、サポートしている。
通信課程での学習は土曜日を登校日とし、レポート提出、年2回の定期試験を受けて単位を取得する。自由登校の水曜日と金曜日は学習サポートの日。国語・英語・数学の学び直し、英検指導、大学受験に備えての小論文講座、パソコン講座など多彩なクラスがあり、どれも少人数制で指導を受けられる。
木曜日は隔週で「特別活動」を実施。地元堺市の史跡探訪、陶芸、登山など興味を広げるものや、大学見学、職場見学など将来設計につながる体験活動を年間30時間、受講する。
「学校生活に挫折し、傷ついて通信制に来る生徒たちが元気になれる体験をたくさん用意してあげたい。元気になれば、彼らは若いですから向上心や将来の夢が湧き上がってきます」
チャペル、体育館、図書館、食堂などの施設は全日制と共用。制服、校則もあり、賢明学院の生徒としての自覚と誇りを育む。
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入試前の相談会で不安をケア
進学、就職まで親身にサポート
長瀬教頭は長年、通信制高校、定時制高校、特別支援学校で教鞭をとってきた。他の教師陣もベテラン揃いで、3名は通信制高校で10以上のキャリアを持ち、カウンセリングマインドに長けた先生たちだ。学校生活に不安のある生徒に心を傾け、何でも相談できる環境づくりを心がけている。それは保護者と向き合うときも同様だ。
「不登校や中退は本人も辛いですし、親御さんも心を痛めています。不安をケアし、伝統校である賢明学院で学ぶことに安心していただきたいです」と長瀬教頭。
あえて郵送やウェブでの願書受付はしていない。受験までに必ず生徒と保護者で「学校相談会」と「入試相談」に参加して、通信制のシステムやルールを理解し、不安や悩みは相談してもらう。そして願書は生徒本人が学校へ持参する。
「入試までに3回、学校に来てもらうことで、生徒にも親御さんにも学校は怖くない、教師は味方だと体感してほしいのです」
本校では全日制の先生と協力しての学習・進路指導で、大学合格、専門学校、就職へと導く。保育系短大に進学した卒業生は、通信制過程の体験学習で賢明学院幼稚園の職場体験をしたことが進路決定のきっかけになった。「幼稚園の先生として戻ってきます」と言っているそうだ。また、大学の指定校推薦枠が広がりつつあるのもうれしいことだ。
賢明学院通信制課程のミッションは、生徒の高校卒業だけではなく、彼らが自信と学校生活を取り戻すこと。『やり直そうと思ったときがスタートだ』が生徒と先生方との合言葉だ。
「生徒たちが、もう一度、学校の楽しさを知り、自信をつけて将来へ踏み出せるよう、背中を押してあげたいです」と長瀬教頭。
カトリック精神に裏打ちされた温かい教育で、これからも生徒たちの再スタートを応援していく。
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