個性を尊重しながら
適性に応じた進路を
四條畷学園高等学校は現在、中高一貫コースを除いて3コースを設置している。
難関大学を進学目標とする「特進文理」コースと、保育士・幼稚園教諭をめざす「保育」コース。そして約260人と、最も生徒数の多い「総合キャリア」コースである。
「総合キャリア」コースは、女子のみの「総合クラス」6クラスと共学の「吹奏楽クラス」と「情報クラス」各1クラスずつで構成される。実に様々な個性と夢を持つ生徒が集まるコースなのだ。
「特進文理」コースと「保育」コースは生徒の進路目標がある程度定まっているため、キャリア教育もそれぞれ進路を具体化する形で行われている。「総合キャリア」コースも以前から学年ごとに進路ガイダンスを実施していたが、思うような成果が出ていなかった。
そこで、4年前にプロジェクトを立ち上げ、「総合キャリア」コース全体として体型的カリキュラムを構築。3年前から実施している。その中心を担っているのが、進路指導部キャリア主任の木村寛教諭と進学主任の小山宣宏教諭である。
木村教諭は、「生徒一人ひとりの個性を尊重しながら、社会人基礎力を身に付けさせ、自分の能力や適性に応じた進路を見つけられるようにしています」と話す。
「サービス接遇検定」から
マナーを学ぶ
キャリア教育は、まず「知る」ことから始まる。1年生は4月に、職業に対する自己適性検査を実施する。進路を決める前にどんな職業があるのか視野を広げ、また自分はどの職業に適しているのかについて考えさせることが目的だ。5月からは、キャリアガイダンスが始まる。キャリアガイダンスとは、専門学校や大学から講師を招いた職業分野別の講義のことで、ジャンルは、教育系・医療系・食物系・美容系など全部で6系統ある。吹奏楽クラスには音楽系、情報クラスには情報系の職業に関する講義を特別に組み込んでいるが、それらも含めて全生徒が6系統の職業について学ぶことになる。
「先入観を持たずに、こんな道があるのかと知ってもらいたい」と木村教諭。
小山教諭は「5月〜11月の長期間の中で定期的に実施することで、常に進路について考えるように、意識して刺激させています」と笑顔で話す。
また、1年入学直後からスタートする学びもある。「サービス接遇検定」だ。この検定は、接客・サービスに必要な専門知識やコミュニケーション能力を認定するもので、企業でも取り入れられている。
木村教諭は、「検定での合格は二の次。一番の目的は、挨拶や言葉遣いなど基本的なマナーを身に付けさせることです」と説明する。そのため、キャリア教育チームは事前に1年生のクラス担任に「サービス接遇検定」の意義をレクチャー。担任団が一丸となって生徒の学習意欲を高めている。週に3日、終礼時の10分間にテキストで学習し、11月に3級を受験する。2年生では2級合格を目指す。
「サービス接遇検定」を導入して今年で3年目。コース全体にすっかり定着した。生徒たちにも落ち着きが見られるようになったという。小山教諭は、「生徒がマナーの良くない行動をしたときに、接遇検定を引き合いに出して『どうだったかな』と言うと、すぐに気づいてくれます」と話す。
専門学校や大学生活を体験
2年生では「体験する」がテーマだ。まず5月に「職業体験」として主に専門学校に出かけて授業を受ける。行き先は、あらかじめキャリア教育チームがリストアップしたなかから生徒が選ぶ。
「専門学校は10校ほど。生徒が希望するジャンルを揃えています」と小山教諭。
今年の一番人気は、美容系。女子高生らしくメイクやネイルに関心が高い。続いてブライダルや動物系の希望も多い。
6月と10月には短大・大学での「上級学校体験」を実施する。四條畷学園短大・大学を始めとして神戸国際大学や大手前大学、梅花女子大学などで、保育や看護、経済、経営、食物等々と幅広い分野から自分の受講したい講座を選び、大学生と一緒に授業を受ける。その他、任意で大学や専門学校の見学ツアーに出かける生徒もいる。看護やリハビリ系に関しては職場体験も支援している。 |
社会人基礎力を鍛える
プレゼン大会
3年生になると、いよいよ進路選択だ。これまでに得た知識と体験をもとに、自分の未来地図を描く。
「進路をしっかり考えるようになり、決めるタイミングも格段に早くなりました」と、小山教諭はキャリア教育の効果を実感している。
生徒の多くは指定校推薦やAO入試で進学する。2学期にはほとんどの生徒の進路が決まるため、体育会や文化祭の後は一種の「空白期間」が生じてしまう。そこで、昨年から始めたのが「社会人基礎力」を学ばせようと考えたプレゼン大会だ。テーマは、地元のイタリア料理店の新メニューを考案し、それらをグループでまとめて発表すること。生徒たちはチームでアイデアをまとめ、試作し、プレゼン資料を作成。クラス内決戦を経て、12月のプレゼン大会で優勝を競った。
「生徒のモチベーションを上げるために趣向を凝らしました」と木村教諭。告知のタイミングやオリエンテーションの内容に工夫を凝らし、生徒たちが盛り上がるようにプレゼン大会の趣旨を説明した。また、オーナーシェフを招いて料理人としての思いを語ってもらった。実際に、生徒たちは意欲的に取り組み、プレゼン大会は大きな盛り上がりを見せ、大接戦となったクラスも現れた。
優勝を勝ち取ったメニューは「たらとたらこのクリームパスタ」。この作品がオーナーシェフの目にとまり、実際にイタリア料理店で期間限定メニューとして提供された。生徒たちは、チームで頑張った達成感とともに高校生活を締めくくり、それぞれが選んだ道へと巣立っていく。
3年間の高校生活を終え、無事に巣立っていく生徒たちを見送る木村教諭と小山教諭は、それでも次の学年はキャリア教育をさらに充実させたいと新たなプロジェクトを考えている。小山教諭が「進路の迷子にさせない」と語る言葉は力強い。
|