国際バカロレアクラスの新設は
考える教育へと移行する足がかり
昨年6月、大阪女学院は国際バカロレア(IB)の候補校になった。それに伴い、2018年度から高校に「国際バカロレアクラス」を新設する。
国際バカロレアは、1960年代にスイスで開発された教育プログラム。本来は世界各国の外交官や国際機関職員の子弟が、現地のインターナショナルスクールを卒業した後、母国の大学に進学するための資格を付与する目的で開発されたものである。現在、4つのプログラムがあるが、そのうち16歳から19歳向けのディプロマ(DP)を同校では実施する。
ディプロマのカリキュラムは、「言語と文学」「言語取得(外国語)」「個人と社会」「理科」「数学」「芸術」の6つの要素で構成されており、文系・理系の枠を超えた内容になっている。
「本校がIBを導入した理由は、海外の大学への進学を後押ししたいからではありません。実際、昨年も海外の大学へ11名の生徒が進学しています。大きな目的は、考える教育に転換をはかるための足がかりです。IBは、世界各地で学ぶ生徒に、人が持つ違いを違いとして理解し、異なる考えの人にも、それぞれの正しさがあり得ると認める。そういった人間になってほしいとの理念を掲げているのです。そこに深く共鳴して、IBに申請しました」と廣田雅司校長は導入の理由を熱く語ってくれた。
初年度の募集人員は15名の予定。高1の間は通常の授業を受けるが、高2からはIBの定めるカリキュラムに従って授業を進めていく。英語、数学に関しては、両者ともオールイングリッシュの授業となる。
「IBはコア科目として『課題論文』『創造性・活動・奉仕』『知の理論』を掲げています。特筆すべきは、知の理論(Theory of Knowledge)です。私たちは何を知っているのか?そもそも知るとはどういうことか?といった課題を通して、物事の本質を考え、批判的思考を養い、自分の見方や他者との違いを認識するプログラムになっています。これからの時代は、考える力が何より必要になります。それを身に付けるために、本校は世界的に評価の高いIBを導入したのです。私も実際に研修を受けましたが、こんなに勉強したことはない!というぐらい濃密な内容でした」
大阪女学院には、英語が堪能な教員が多く、数学科の教員もイギリスの大学院で学んだ経験があり、英語での授業は問題がないという。
2年間の学習の後、生徒は高3の11月に世界統一の筆記試験を受ける。外部評価の筆記試験と内部評価の課題を合わせて、IBの正規評価を受けることになる。
「ディプロマは、世界各国の大学にスムーズに進学させることを目的に開発されたものですので、海外の大学の入学資格として活用されています。国内でも特別入試の枠で小論文や面接に加え、DBのスコアを合否の判断材料にしている大学が増えています。東大、阪大、早稲田大、慶応大など難関校でも採用されており、進学面でも大いに活用できます」
国際バカロレアクラスの入試内容は、英数国の試験に加え、グループ討論、面接を予定しており、近々に詳しい内容を発表するとのことだ。
浸透してきた国際特別入試
英語力の強化は必須の時代に
大阪女学院高校は、普通科(文系、理系1類、2類)、英語科に分かれており、全員が進学をする。京都大、大阪大、神戸大など、毎年50名以上の生徒が国公立大へ合格しており、特別推薦では、早稲田大、国際基督教大、同志社大、立命館大、関西大をはじめ、多数の枠を有している。
中学校ではコース制はとってないが、2015年から国際特別入試を行っている。これは、高い英語力をもつ小学生を対象に行われるもので、試験は英語によるインタビューが中心。語彙やリスニング能力よりも表現力が重視される。入学した生徒は一般のクラスに入るが、通常の英語以外に週に1度、ネイティブ教師による特別授業を行い、英語力を強化している。
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「国際特別入試で入学した生徒は、中1の5月の段階で、予習なしで長文を読んだり、正しい発音も見事にこなしています。最近は保護者からの問合せが多くなってきていて、小さい時から英語力を身に付けさせようという動きをひしひしと感じます。今は働くお母さんが大半ですので、社会が何を求めているのかをよくご存知ですね」
少しずつ浸透をしている国際特別入試。「今は一般のクラスに混ざって授業を受けているが、近い将来、1クラスになると思います」と校長は話す。
キリスト教の精神を奉仕活動で実践
福祉、人権学習で自分の意見を確立
キリスト教の教えを基盤とする大阪女学院では、当然のことながら宗教行事が多い。毎朝の礼拝に始まり、聖書の授業、修養会、伝道週間、クリスマスのミサなど数多くの行事が年間を通してある。また、力を入れているのが人権学習である。貧困、差別、戦争など困難な諸問題に取組むことで、社会の実相を学んでいく。
「本校は人権学習、福祉学習に力を入れています。生徒は討論を行い、考えながら自分の意見を確立していく。それを文章に残す作業を6年間ずっと続けて行います。各界の専門家を招いての講演会も多く、貧困問題の第一人者、法政大学の湯浅誠氏や、中東問題に詳しいジャーナリストを招いて、イラクの現状を講演してもらったこともあります」
関西の女子教育を率いてきた大阪女学院が、また新たな1ページを開こうとしている。
《保護者のためのevening説明会》
7月28日(金)18:30〜20:30
あべのハルカス25階
申込はWebにて、7月16日(日)より受付開始
8月25日(金)18:30〜20:30
アクセス梅田フォーラム
(大阪富国生命ビル12階)
申込はWebにて、8月10日(木)より受付開始
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