変化の中にあっても守るべきことは
確かな学力と人間力の確実な育成
立命館宇治中学校・高等学校の教員だった寺田氏は、2014年までの5年間を本校副校長として勤め、再び立命館宇治の管理職としていくつかのプロジェクトを手がけた後、満を持して本校校長に就任した。「身の引き締まる思いですし、校長として全体を俯瞰しつつ、気配り、目配りが大事であると思っています」と心境を語る。
京都、滋賀と近隣には立命館附属の中高一貫校が3校あるため、今後10年の第2ステージは本校ならではの特色を強く打ち出していく重要な時期だ。
グローバル化、情報化、少子化とめまぐるしい変化の中で子育てをしなければならない現代の保護者は、当然多くの不安を抱えている。教育の世界でも時代を先取りして新しいものをどんどん取り入れ、乗り越えていこうとするのが主流だ。
「しかし、『不易流行』という言葉通り、忘れてはいけない部分が2つあります。ひとつは確かな学力、基礎・基本の力、そして幅広い知識と教養、スキルを身に付けさせる。もうひとつは社会に出てからしっかりと生きていける人間力。この部分をきっちりと押さえた上で、教育を支えるツールとしてのICTや情報・科学教育、国際教育などを展開していくということを考えています。変化の中でも本質を見誤らない。これが私の強い思いです。」
校長着任後、寺田校長は自ら毎朝校門の前に立ち、生徒たちへのあいさつを始めた。生徒も他の教員も驚いたが、すぐに教員たち、有志の生徒たちも校門に立ち校長に続いた。
「本校は若くて熱心な教員が多く、変化にスピーディーに対応できる。これは組織として大切なことです。このあいさつ運動も賛同してくれる教員の方々が多く、本当に勇気づけられました。」
学校も組織としての力が発揮されることで、より強くなっていくと語り、常に教員室に出入りして先生方とのコミュニケーションを図ることに重きを置く。
また、明確な教育方針を作成するにあたり、今年度より中学・高校ともに各教科主任による管理職へのプレゼンを提案した。管理職は目標の数値化や施策の明確さなど、方針をより具体化するためにどんどん意見を出していく。お互いの目標を共有しながら、年度計画をよりブラッシュアップする事を目的としている。
さらに中高一貫校の強みを最大限に生かすため、6年一貫の担任制を検討。毎年一人づつ、最終的には教員全員が体験するという方向で提案中だ。将来的には、中学の課程を中学2年生で終え、中学3年生からは高校の課程に入ることも視野に入れている。
創立10年目にして東大合格者輩出
国公立大学進学率が一気に上昇
同校には、中学・高校ともに立命館大学進学を目指すアカデメイアコースと、医学系・難関国公立大学進学を目指すフロンティアサイエンスコースの2コースがある。いずれも文理両分野をバランス良く学習するとともに、地域と連携してのフィールドワークなど多くの体験型学習を取り入れている。スーパーサイエンスハイスクール認定校に恥じない最先端の科学教育施設・IT設備を駆使した授業。何より生徒全員がタブレット端末を持ち、学校や家庭学習で活用中だ。
アカデメイアコースでは高校3年生で進路選択をする。プログラムは、文T・U(人文・社会系)、グローバル(国際系)、理系T・U(サイエンス)、理系の成績上位者を集めたアドバンスト理系(アドバンスト・サイエンス)の4つの選択肢がある。
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今年はフロンティアサイエンスコース卒業生24名の中から東大合格者が出た。また、京大4名、阪大2名ほか、12名が国公立大学、12名が難関私大の理系に合格。中高一貫の充実した学びの成果もさる事ながら、大学受験を通過点とし、その先を見据え目的意識を持って勉強する生徒たちの勝利と校長は語る。
「本校の生徒は、入学時と卒業時の成績の上昇率が非常に高いのが特徴です。東大合格の生徒は、模擬試験でも最後まで高い偏差値を維持しました。滋賀県下の進学校でも国公立合格率は30%止まりの中、50%の数字を叩き出したのは誇れるべきこと。教員たちも本当に頑張ってくれたのだと思います。」すでに始まっている来年度の学校説明会では、フロンティアサイエンスコースに注目が集まり、例年以上に相談ブースは盛況だという。
また、立命館守山出身者の上場企業への就職率は現時点で33%と高確率の上、こちらも右肩上がり。企業からも高い評価を得ていることの証明だ。
発足一年の野球部も県ベスト8と大活躍
「選ばれる学校」への確かな道のりを歩む
昨年発足した硬式野球部は滋賀県大会でベスト8まで進出した。アメフト部、バトントワリング部も専門コーチを迎えて中高一貫の取り組みをスタート。また、2024年度滋賀国体開催に向けて、女子ハンドボール部、男子ソフトテニス部が強化拠点校として県から選ばれた。どのチームもスポーツ推薦などで集められたわけではなく、ごく一般の生徒たちがコツコツと努力し実力を上げてきた結果だという。
まさに文武両道と言える同校だが、「選ばれる学校」への着実な歩みがそこにある。滋賀県は2020年以降、確実に受験者数の減少期に突入する。しかし、縮小の選択はまったくない。
「充実した教育を今後も発展させていくために、教員を採用していく予定です。様々な専門性を身に付けてこられた方に本校に来て頂いて、一緒に教育作りをして頂きたい。これが私ども管理職に与えられた役目だと思っています。」
寺田校長から伝わるその気概は、本校の伝説を作り上げると同時に、確実な進化を予感させた。
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