授業も部活も
全力投球が帝塚山スタイル
今年度から校長に就任した池辺政人校長は人気の要因を、「進学実績の好調も一因ですが、面倒見の良さが評判になっているのでは」と話す。
創立以来の「子どもや若い人たちは学園の宝」という教育精神が受け継がれ、生徒の個性を尊重し、個性を伸ばそうとする方針が面倒見の良さにつながっている。
池辺校長が常日頃から生徒に、また自らにも言い聞かせているのは、「今を大切にする」こと。
「毎日コツコツと重ねる努力が人を育てる。目の前にある授業やクラブにしっかり取り組むことで先が見えてきます」
そういう池辺校長自身、教職と美術家としての創作活動を両立させてきた。生徒たちも、「授業も部活も全力投球」が帝塚山スタイルだ。
理科部ロボット班が世界大会に
中高アベック出場の快挙
中学生は全員、高校生も7割近くがクラブに加入している。
ギターマンドリン部は全国中学校・高等学校ギターマンドリン音楽祭で大賞や金賞を何度も受賞。テニス部がインターハイに出場するなど全国レベルのクラブも少なくない。なかでも理科部ロボット班は世界大会レベルだ。
昨年は、まず5月にスペインで開催された世界最大級のロボット競技大会「ファーストレゴリーグ・ヨーロッパチャンピオンシップ」に出場。ロボット競技部門とプレゼン部門の合計点で競い、「アントレプレナーシップ賞」に輝いた。プレゼンはもちろん英語だ。競技部門においても、当日会場で新しいルールが英語で発表される。その場で正しく理解し、プログラムを組み直さなければならない。そのため、大会前に英会話の練習を重ね、ネイティブ教師からも指導を受けてきた。
「そりゃもう毎日真剣そのものでしたよ」と池辺校長は頬を緩ませる。
続いて9月のワールドロボットオリンピアード(WRO)日本大会では、中学・高校のダブル優勝を果たした。これは大会始まって以来の快挙だ。日本代表として中高の2チームが揃って11月にインドで開催された世界大会に出場し、高校チームが5位に入賞した。
生徒たちはクラブだけでなく学校行事にも本気を出す。60年以上続く伝統のコーラスコンクールは、クラス対抗。指揮も伴奏も練習も全て生徒に任される。最初はバラバラだったハーモニーが練習を重ねてひとつになっていく。コンクール当日、力を出し切った生徒たちは、結果が良くても悪くても、感極まって泣き出すという。
体育祭の入場行進も賞の対象となるため、どのクラスも行進の練習に熱が入る。
「行進ひとつにも一生懸命で、皆がまとまろうとする。そういうクラスだから最後まで受験を乗り越えられるのだと思います」
国際交流プログラムがさらに充実
大学進学の先を見据え、グローバルな視点や感覚を養うために、様々な国際交流プログラムを実施している。
姉妹校であるシンガポールACJC(アングロ・チャイニーズ・ジュニア・カレッジ)とは互いに訪問し合い、スポーツや文化交流を25年以上続けてきた。
海外研修は、中学3年の夏休みに14日間のシアトル研修を実施。語学研修やホームステイ、キャンプ生活を体験する。3月に、男子は海外サイエンスキャンプ。女子はシンガポールやマレーシア、インドネシアを訪問してアジアの多様性を学ぶ。今年7月は新たに高校2年の希望者対象にボストン研修が始まる。
昨年9月と今年2月には、「サイエンス・ダイアログin TEZUKAYAMA」を開いた。これは、日本で暮らす若手の外国人研究者を講師に招いた出前授業。2月は高校2年女子英数コースが、化学と心理学、農学の研究者3人の講義を受講。講義はすべて英語だが、プレゼン資料と日本語解説を加えて生徒の理解を助けた。
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今年8月、高校1年生を対象に新たなプログラムがスタートする。海外トップ大学の大学生を招き、5日間にわたりグループディスカッションなどで彼らと行動を共にする。
「将来に対する明確なビジョンを持った大学生から刺激を受けてもらいたい」と池辺校長の期待は大きい。
海外で夢を叶えた日本人を招いて行うグローバルキャリア教育講演会も好評だ。昨年は高校1年女子英数コースで実施した。今年は中学3年生を対象に行う予定だ。
多様なプログラムを通して、生徒が自分で問題点を発見し、考えを深め、英語で発表できるところまで持っていくことが目標だ。21世紀の社会で活躍するグローバルリーダー育成が着々と進んでいる。
円型校舎のお別れ会に
帝塚山ファミリーが集結
「中学生はしっかり習慣づくり、高校生はやる気に火をつける」
東京大・京都大を始めとする難関国公立大に多くの合格者を出す帝塚山の教育指針だ。コースごとにあるいは学年ごとに行う高大連携事業や学内で開催する大学説明会など、学習へのモチベーションを高めるイベントは数多い。
なかでも人気が高いのがキャンパスツアー。京都大では院生や学部生の案内で学内を散策した後、交流会が開かれる。昨年は高校1・2年生103名が参加した。同様のことは大阪大・神戸大でも実施している。
毎年の恒例行事となっているのがキャリア教育講演会の弁護士編と公認会計士編。どちらも卒業生数人ずつが講演する。毎回卒業生が自ら買って出てくれるという。母校愛である。
生徒の個性や目標に応じた多彩な教育プログラムを展開しているが、「どんなプログラムも生徒が学校で安心して過ごせないと勉強に身が入りません。帝塚山が自分の居場所であるという安心感と仲間との感動体験が意欲の源です」と池辺校長。
一昨年、長年親しまれてきた円型校舎が取り壊される際にお別れ会が開かれ、約千人の卒業生が集まった。
池辺校長は、「これが本校の底力。大きなファミリーのような温かさが本校の誇りです」と胸を張る。
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