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中学・高校受験:学びネット

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綾羽高等学校

 
  将来の夢や進路希望に合わせて選べる3課程9コース
滋賀県草津市にある綾羽高等学校は、全日制・昼間定時制・通信制の3課程を併設する全国的にも珍しい高校である。51年前に紡績会社の企業内高校として創立された同校は、時代の移り変わりに柔軟に対応して進化・発展を遂げてきた。現在は、3つの課程に9コースを設置。介護福祉・食物調理・製菓・美容・体育など特色ある教育を展開し、地域で高く評価されている。近年は全日制の総合進学コースが、公立高校の併願校として人気が高まり、滋賀県内の私立高校志願率のトップに浮上してきた。

校 長: 伴野 勇人
住 所: 〒525-0025 滋賀県草津市西渋川1-18-1
電 話: 077-563-3435(代表)
交 通: JR琵琶湖線「草津」駅西口より徒歩7分
学生数: 1,023名名 (2016.10.1現在)
ホームページ: http://www.ayaha.ed.jp/

 

昨年創立50周年
全課程が揃う高校へと発展

 昭和40年の高度経済成長真っただ中、綾羽紡績株式会社(現・綾羽株式会社)が自社で働く中学卒業の人たちのために、草津工場内に創立した高校が綾羽高等学校である。

 その後、高校進学率の上昇や繊維産業の海外移転に伴い、社内での中学卒業生の採用が減少。昭和60年からは外部通学生の受け入れを開始した。平成6年には通信制課程を設置。平成20年に全日制課程を加え、全課程が揃う高校へと発展。昨年、創立50周年を迎えた。

 建学の精神である「行学一致」と、教育理念の「知育」「徳育」「体育」「職育」は、創立時より脈々と受け継がれ、学びと実践の両方に重きをおき、職業観の醸成に力を入れている。

 同校での3つの課程の名称は、プログレスセクション(全日制)・キャリアセクション(昼間定時制)・グロースセクション(通信制)。現在、3セクションを合わせて1,000人を超える生徒たちが、それぞれの夢や進路希望の実現に向けて学んでいる。

経済的自立と資格取得が
魅力のキャリアセクション

 3つのセクションのなかで一番歴史があり、建学の精神の「行学一致」を体現しているのがキャリアセクションだ。

 3年間を通して、年間2単位のインターンシップが義務づけられ、生徒は午前あるいは午後の半日をインターンシップ先で働く。

 キャリアセクションの高萩康全教頭は、「勉強と仕事の両立を経験することで、人間力を高め、生きる力と社会人としての知恵を身に付けていきます」と話す。

 キャリアセクションには、「食物調理科」と普通科の「標準コース」「美容コース」「情報コース」「製菓コース」が設置されており、コースにより登校が午前と午後に分かれる。

 例えば食物調理科は、午前中は学校で学び、午後からインターンシップ先に出勤。製菓コースは午前中に仕事を終えて午後から登校する。

 インターンシップ先は、学校で紹介するが、生徒が自分で見つけてくるケースもある。

 単位認定のために、教員は職場に足を運んで生徒が実際に働いている姿を確認したり、毎月職場と連絡を取り合う。もちろん、何か問題があればすぐに対応する。前期と後期に職場から「就労証明」を提出してもらうことで単位が認められる。

 中学校を卒業したばかりの生徒にとって、働きながら学ぶことは決して容易なことではない。そのため、入学から卒業まで学校と職場、保護者が一体となって生徒を支えている。

 高萩教頭が生徒にいつも言うのは、「仕事で辛い思いをしたときは愚痴を言ってもいいが、自分が人間として磨かれている意味合いもあることを覚えていてほしい」ということ。

 生徒も3年生になると、教師と社会人同士のような会話を交わすようになる。

 「『先生、それは仕事だからしょうがないな。でも、気持ちわかる』なんて言ってくれます」と高萩教頭は苦笑い。

 同校の3つのセクションのなかで最も人気が高いのもキャリアセクションだ。毎年、募集定員を上回る専願志願者を集めている。卒業生の子どもが入学してくることも少なくない。

 その理由は、インターンシップで得た収入を授業料に充てられることと、各コースの魅力にある。

 将来、調理師をめざす生徒は、食物調理科で調理の基礎から和食・洋食・中華の幅広いメニューを学ぶ。卒業時には国家試験免除で調理師免許を取得して、最短距離でプロへの道を進むことができる。

 「普通高校卒業後に専門学校へ進む場合と比較すると、期間や費用の面のメリットだけでなく、技術を身に付けるのに年齢が早いほど有利ということがあります」

 実際に卒業生は、現場で即戦力として高く評価されている。現在地元のホテルで働く女子卒業生は昨年、若手料理人の登竜門である「フランス料理最優秀見習い料理人選抜コンクール」で、総合1位を獲得した。

 また卒業後すぐに、提携する辻調理師専門学校のフランス校に留学する生徒もいる。独立して店を構えている卒業生も多い。そのなかにはミシュランに掲載されている料理店もある。

 「製菓コース」は、2年生修了時点で国家資格である製菓衛生師の受験資格を取得できる。同校では受験対策に力を入れ、卒業までに90%以上の合格率を目指している。

 「美容コース」は、入学と同時に提携している美容専門学校にも入学する。3年後同時に卒業できる仕組みだ。そのため、卒業時点で美容師の国家試験受験資格を取得できる。国家資格を取得後、さらなるステップアップのために海外を目指す生徒もいる。

 キャリアセクションの生徒たちの進路は、進学と就職が半々の割合だ。就職した生徒の定着率は高く、企業からの評価も良いため、求人は多い。9月時点で学校に届いている求人は720件にも上る。

 高萩教頭は毎年、滋賀と京都を合わせて数十校の公立中学校から、職場体験の事前講習の講師として招かれている。

 「『なぜ?何のために働くのか?』という話をします。今後は高校生向けのカリキュラムを組み、正しい職業観を醸成していきたい」と高萩教頭は意欲を語る。

安心して自分のペースで
学べるグロースセクション

 狭域通信制のグロースセクションは滋賀県と京都府の地域の生徒を対象としているが、圧倒的に滋賀県の生徒が多い。毎年70名前後が入学し、2クラスを編成。クラス担任は、卒業まで一人ひとりをきめ細かくサポートする。

 設置しているコースは週末コースのみ。生徒は年間30回土曜日に登校し、スクーリングを受講する。

 生徒の9割は新入学で、残りの1割が他校からの転入学。多くは、不登校あるいは不登校傾向の生徒だ。

 グロースセクションの水谷泰三教頭は、「生徒たちは、高校はきちんと卒業したいという気持ちで頑張っています。中学のときは全欠席だった生徒が、ここでは全出席で卒業していくこともあり、中学時代とは気持ちの持ち方が変わるようです」と話す。

 毎回のスクーリング出校率は8割を超えている。なかには9割を超えるクラスもあるという。生徒が希望すれば全日制や昼間定時制への転籍も可能だ。

 土曜日以外は、アルバイトをしている生徒が多い。また、平日に登校して教師に分からないところを教えてもらいながら、レポートに取り組む生徒もいる。教師との距離が近く、スクーリング日以外でも気軽に登校して質問できる。

 生徒に入学の動機を聞くと、多くが「面倒見がいいから」と答える。

 水谷教頭は、「当たり前のことを当たり前にしているだけですが、卒業した生徒たちがちょくちょく顔を出してれるのは嬉しい」と顔をほころばす。

 バス旅行や自然体験学習、修学旅行などセクション単独の学校行事も多い。修学旅行の参加率は3〜5割という。

 「自主性を引き出すために、生徒の意志に任せています」

 グロースセクションの良さは、自分のペースで学べる自由さと、自主的にクラブ活動などの学校生活に参加できる柔軟さにある。実際にバスケットボール部や陸上部に数名が参加している。また、夏期講習や冬期講習など進学補習は、他のセクションの生徒たちと合同だ。

 卒業後の進路は保護者とも相談しながら慎重に決めていく。まだ自分に自信の持てない生徒には無理強いしない。約半数の生徒は、卒業後も引き続きアルバイトをしたり家の手伝いをしたりする。

 残りの半数のうち3分の2の生徒は、大学や短大、専門学校に進学する。有名大学に合格する生徒も少なくない。

 他の3分の1は、正社員として就職する。就職希望の生徒は、他のセクションの生徒と同様、学校に送られてくる求人票の中から応募先を選び、面接指導や履歴書指導を受ける。昨年は就職希望者10名全員が、就職することができた。

 水谷教頭が常に意識しているのは、「生徒が安心して学べる場であり続けること」だという。

 少人数であることや全日制・定時制・通信制の併設校であるメリットを活かして、グロースセクション独自の取り組みが続けられている。

進学実績アップを狙う
期待の「総合進学コース」

 全日制のプログレスセクションは、「介護福祉科」と普通科の「総合進学コース」「体育コース」を設置している。このうち「介護福祉科」と「体育コース」は、もともとキャリアセクションに設置されていた実績あるコース。授業時間や練習時間を確保するために全日制設置と同時に移行された。

 「介護福祉科」は、2年生で介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)の資格を取得し、3年生の1月に介護福祉士国家試験を受験する。

 プログレスセクションの佐々康浩教頭は、「昨年度の介護福祉士国家試験の合格率は77.3%に達し、全国平均の57.9%を大きく上回りました」と胸を張る。

 進路は、進学と就職が半々の割合。ほとんどは介護・医療系に進むという。

 一方、全国大会レベルの部活で人気を集めているのが「体育コース」だ。生徒は、サッカー、硬式野球、ソフトテニス、女子バレーボールのうち、いずれかの強化指定クラブに所属し、週3回は午後からクラブ活動に取り組む。

 ソフトテニス部は全国大会の常連。今年はハイスクールジャパンカップとインターハイに出場した。サッカー部も今年インターハイに初出場。3年前には全国高校サッカー選手権に出場している。

 しかし、サッカー部の部員は平均して60〜70人。ソフトテニス部にいたっては20数人だ。歴史も浅く人数も少ないチームが実績を挙げている理由を、佐々教頭は「ボトムアップ方式の指導です。練習方法や作戦など何事も生徒が決めています」と説明する。

 選手たちが主体的に、相互に意思疎通を図りながら練習を重ねることで、瞬時の判断と動きが可能になる。

 高校卒業後は、スポーツ推薦で大学に進学したり、特技を生かして就職したりするケースが多い。

 「総合進学コース」は、綾羽高校のなかで最も新しいコース。国公立大学や難関私大進学が目標だ。公立志向の強い滋賀県で、併願校として受験者が増えている。

 しかし、佐々教頭は「進学実績を上げて、そこに引かれて生徒が集まるコースにしたい」と話す。

 そのために様々な取り組みを始めている。昨年度はプロジェクターを設置し、今年度はICTを活用した高校向け学習支援サービスの「Classi」を導入。課題をClassiで配信している。

 また、今年は夏期補習で5日間の予備校講師による講座を開いた。受講したのは「総合進学コース」の1・2年生全員。「テンションが高くておもしろい」「勉強方法がためになる」など好評だった。

 現在の課題は、放課後の有効活用だ。自習室は20時まで開放しているが、利用するのは3年生のみ。そこで、いま検討しているのが、放課後の講習である。

 「塾や予備校に通わなくても、学校でしっかり面倒を見て、希望の大学へ進学させたい」と佐々教頭。

 まだまだ発展途上の「総合進学コース」。新しいコースだけに、大きく伸びる可能性に期待が持てる。

 
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