生徒募集にも特徴を
上宮ならではの特色づくり
2011年に共学開始、今年度で6学年すべてに共学クラスが設置されることになった上宮中学校・高等学校。しかし、大阪の公立中学の学校選択制や変わらぬ少子化の影響などにより、中学受験熱がさほど向上していないという要因もあって、今年、中学入学生は定員割れを起こした。
この件について、入試広報部長の相本秀彦教諭は「今、一番力を入れているのは上宮らしい生徒募集」と主張する。
「生徒数の定員確保は重要ですが、だからといって、どんな生徒でも受け入れるわけではありません。現在のレベルを維持し、一定の基準に満たない生徒は不合格とします。また、昨年まで2回だった入試を3回にするかも知れませんが、この3回目の入試では特進のみの募集とするつもりです」
上宮中学校は、難関国公立大学を目指す特進コースと、国公立・難関私立大学合格を目標にしたアップコースの2コース制。3回目の受験でコースを絞ることで、他校との差別化を図る考えだ。
また、入試以外にも各学年がバラバラに行っている勉強合宿を統一させることを企画。同じ施設に宿泊し、上の学年が下の学年の勉強や生活などの面倒を見ることで、学びとともに絆づくりや人間的な成長も促すのが狙いである。
「共学化を実施した時も、準備期間はわずか1年ほど。そんな短い期間で男子校が女子生徒を受け入れる基盤が作れるのか疑問もありました。しかし、現在ではまるで何十年も共学校のような雰囲気です。これを踏まえ、次の改革も実践すればスムーズにいくと考えています」
他校との差別化を図りながら改革を行うには、奇を衒う必要は無いが、流行に乗せられたり、他校と同じことをしていてはいけないと語る相本広報部長。上宮としてのプレミア感を残したまま行う、次の改革企画を次々と打ち出している。
読み・書き・計算が伸びる
タブレットの効果的な使い方
近年、授業のIT化が進んでいる中学校教育。上宮でも担任を持つ教員を中心にタブレットを配布し、どのような指導を行うかを模索中だ。
「上宮の特色として、知徳体のバランスの取れた指導と浄土宗の教えに基づいた心の教育を打ち出してきました。ただ、心の教育は確かに大切ではありますが、なかなか他者に伝わりにくい。話す相手の心に上宮の情操教育を浸透させ、共感を得て、さらに他者にその教育内容を伝えてもらうには、非常に時間がかかります。しかし、『上宮では教育の基本である読み・書き・計算をレベルアップさせることができる』という表現ならわかりやすいでしょう」
タブレットには速読力や暗算力をつけたり、美しく文字を書けるように練習するアプリを入れられる。現在、どのようにタブレットを使って生徒を指導していけばいいのか戸惑っている教員も、こういったアプリなどを効果的に使い学力を伸ばす方法がわかれば、自ら使いこなせるように学びはじめる。その教員指導のための準備は始まっている。
一方、中学の3年間は特進コースとアップコースに分かれて授業を受け、1年ごとに成績や習熟レベルによって相互に入れ替える。これをスムーズに行うために、基本的なシラバスは2コースの間で大きく異なることはない。これをもっと頻繁に活用してはどうかというのが相本広報部長の考えだ。月や学期単位で成績によって頻繁に双方のクラスを入れ替える。全教科で変更が無理なら、主要教科だけでも可。これにより、さらに習熟度別授業を促進することができる。習熟度が下がり、特進からアップへ移動になった生徒に対しても、古くから「心の教育」を実践してきた上宮の先生がモチベーションが下がらないように、フォローを適切に行っていくことができるため、保護者も生徒を安心して預けることができるようになっている。 |
無味乾燥な知識記憶型から
自ら考え、意見を述べ合う
思考型の指導へ
「上宮の生徒は先生の言うことをよく聞き、規律を守る、礼儀正しい素直な生徒です。その素直さに思考の柔軟度を加えてやることを、今後は考えております」
実際の社会では、学歴ばかりではなく、色々な経験が必要。それには今の知識を覚える教育だけではなく、生徒に考えさせる授業が重視される。
古典では、なぜこの歌を詠んだのか、そこに歴史的な背景や当時の文化を照らし合わせることで歌の内容の捉え方が変化する。社会は習ったできごとを色々な側面から調べさせ、生徒同士の意見を出してディベートを実践する。こういった指導方法なら、無味乾燥な知識の詰め込みよりも、楽しく、興味深く学ぶことができるのだ。
こうして生きた知識を学んだ生徒は、高校に進学すれば自然と勉強したい、こういうことを学びたいという欲を持ち、それを満たすためにさらに深く学ぶようになる。
「タブレット端末やPCの普及などにより、教育も進化しています。それに合わせ、指導も現状維持ではなく、進化・変化をさせていくべきです。さらに、こういう指導をすることで、上宮の特徴がより一層外部に見えやすくなるでしょう」
上宮の進路指導は『生徒に進路や進学先を強制しないこと』である。進学実績を上げるための受験はさせず、自分の選んだ道へ進ませる。そのための教育の進化であれば、今後も躊躇せず進めていきたいと相本広報部長は熱く語った。
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