アドバンスト理系
グローバルクラスを高2からスタートへ
立命館附属中高一貫校のひとつである立命館守山中学校・高等学校は、今年10周年の節目を迎えた。静かで緑あふれる広大なキャンパス内に、最先端の科学・IT設備、2万2千平方メートルのグラウンド等を擁する。
同校のコースは、中学校・高校とも立命館大学進学を目指すアカデメイアと、難関医学系・理科系大学を見据えたフロンティアサイエンスの2コース。中学校は、アカデメイアコースではなく一貫コースと称していたが、今年から高校と同じコース名に変わった。
中学・高校のすべてのコースで、文系・理系両分野をバランスよく学習し、文系・理系に偏らない学びによって培われる、物事を総合的にとらえ、的確な判断を下し、行動するなどの力は、大学のみのらず社会で不可欠なものである。従ってアカデメイアコースでは、これまで高3進級時に、人文・社会系、理系のクラス(プログラム)に分けてきた。
「10周年の節目にあたり、本校教育の総点検をしました。文理をバランスよく学ぶという基本は変えていませんが、生徒の学力をもっと伸ばせるのではないかと考え、理系の成績上位者を集めたクラス(アドバンスト理系)を高2から作ろうということになりました。世界で活躍できるサイエンスリーダーを育成するためのカリキュラムについての議論をしています。文系においては、今春からグローバル(国際系)クラスを設けました。グローバルクラスも、来春以降は高2からのプログラムにしたいと考えています」と語るのは、松井 健副校長。より優れた人材をさらに伸ばすための改革のひとつである。
今春から全生徒が
全科目でタブレット端末を使用
同校では卒業生の約90%が立命館大学へ進学するが、フロンティアサイエンスコースでは、立命館にない学部を持つ医学系・理学系の難関大学へ進学する生徒が多い。今春、その合格実績が前年までと比べ、跳ね上がった。京大・阪大・滋賀医科大・慶大に各2名、その他、埼玉医科大・大阪市立大・大阪府立大・京都府立大に各1名が合格。そして、ロンドン大学への合格者も出た。東大に合格できるであろう実力を持ちながら、京大を選んだ生徒もいたという。
合格実績躍進の要因としてまず挙げられるのは、中高一貫の成果が現れてきたこと。内部生のがんばりにつられて、高校からの入学生も努力し、全体の学力が底上げされたとか。課外活動、運動部、生徒会活動などにおいても、内部生が先導している。中高一貫の強みが発揮されてきたというわけだ。
「中学受験にあたり、学習塾が本校に優秀な生徒を送ってくれるようになったことも大きい」と松井副校長。今春入学した中1生の学力は驚くほど高いそうで、志の高い生徒が集まったことにより、さらなる高い目標を掲げることができると確信した。
同校人気上昇の一因となっているのが、立命館守山が誇る最先端のICT教育システムだ。今春から、全学年全生徒がタブレット端末を使用。どのクラス・どの教科でもタブレットを活用した授業を実践している。最も活用しているのは英語・理科だが、体育といった実技科目でも動作解析などに使っている。総務省の全小中高への無線LAN導入方針の時期より、4年も早い。「毎月3〜4校が視察にくる」のも当然であろう。
「昔、板書して全員が理解するのに20分かかったものが、タブレットを使うと5分ですみます。この2〜3年で授業形態が本当に変わりました。合理化・スピードアップが進んでいます」と松井副校長。そのために、先生方も切磋琢磨を怠らない。教員向けのICT研修、前期後期ごとの公開授業、研究授業等を繰り返し、ICTをベースにしたシラバス作成に余念がない。 |
校外の課外活動にも柔軟に対応
硬式野球部も誕生
ICT教育とともに、地域連携教育として、琵琶湖など地域特有の自然や産業、文化を教材とし、体験を通じて学ぶプログラムが多く用意されているのも同校の特長だ。また、ネイティブの教員による高度な英語教育を実践しており、中高ともに海外研修が必須。国際教育にも力を入れている。
2020年の大学入試改革への対応・取り組みについても議論しているところだ。松井副校長は「本校第2ステージの骨格をなす中心的命題です。その先進校を視察し、本校教育に落とし込んでいきたい」と意欲的に述べた。
さて、立命館守山では10周年を機に、高校に硬式野球部を創設。19名が入部し、すでに遠征試合にも出ている。立命館大学の支援を受けながら、限られた練習時間を有効に活用し科学的なトレーニングも行っている。
ところで、滋賀県は、県立の地域一番校の人気が断トツと、公立志向が強い受験体制が旧態依然としてある。しかも、一番校に不合格となった場合は県外の私立高に進学する生徒が多い。松井副校長は、その受験体制に風穴を開け、生徒の県外流出に歯止めをかけたいと考えている。「滋賀の生徒は滋賀で育て、世界を動かすリーダーを送り出したい」と、熱く語る。
10年かけて盤石な土台を作った立命館守山。次は伝統作りの時期に入った。全校挙げての「チャレンジ・チェンジ・クリエーション」はまだまだ続く。
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