厳しい環境を超えた後の 達成感が自信につながる
--1年・勉強合宿
今年度より特進1類・2類、標準、6カ年一貫と新たなコース分けでのスタートが切られた啓光学園。昨年までのサピエンスコース・クリアコースの2コースが重ねてきた高い実績をさらに上回る結果が出るように、様々な取り組みが実践されている。特に夏に行われた勉強合宿は、全クラス234名(スポーツコースを除く)が参加。1日に80分の講義3回を含むのべ9時間半に及ぶ学習時間が組まれ、4泊5日の日程中のほとんどを机の前で過ごすという非常にハードな内容で実施された。入学して初めての全国模試である進研学力総合模試対策と、十分な自習時間における自学自習姿勢の確立を目的としているものの、予定発表の時には多くの生徒から「無理だ」という意見とため息が入り交じる声が聞かれたという。
「厳しい日程でしたが、過去の実施状況と成功例を見ていましたので、今年の1年生にも絶対にできるという確信が私にはありました。不安がっていた生徒も現地に着くと周囲の状況に乗せられたのか、最後まで根を上げる生徒はいませんでしたよ」と担当教員である高1学年主任の山田長正先生は合宿内容を振り返る。
合宿の1日は朝6時半の小テストや読書の時間に始まり、夜の10時まで続く。読書は教員からの推薦図書を提供されており、雑誌などを自分で持ち込むことは許可されていない。これは、目に見える数値で表す偏差値とは違い、目に見えない生きていく力を積み重ねるという意味で、良質な本に触れることは勉強と同じくらいに大切なことであるという考えの元、通常授業の期間でも授業前に行われている。
講座は学年全コースの枠を取り払い、完全習熟度別に実施するために、自分が学年全体ではどのレベルにいるのかが把握しやすく、より上を目指すためには良いきっかけとなる。そして、学習の到達度に応じたクラス編成のため、各クラスの人数に差を設けている。これは、生徒全員が講座内容を理解できるように十分な指導を行うための配分となっている。
1日の学習メニューには、約3時間の自主学習時間が含まれている。この時間は渡された英・数・国の課題を自力で解決する力をつけるためのものである。受け身の学習に慣れている生徒には厳しいことのようにも思えるが、学力の向上には主体的に取り組む姿勢を養うことが不可欠である。結果として教員の予想を上回る進度で課題が進められていた。
「自習時間中には無駄話や居眠りなどは許しませんでしたが、それでも予想よりかなり進度が速かったのは、生徒個々の学力が数日間で飛躍的にアップしたということでしょう」。
最後の日、合宿のすべてのプログラムが終わった瞬間、参加した生徒たち全員が安堵の声を上げたが、その顔には困難に打ち勝った達成感と、やればできることへの自信が満ち溢れていた。
この勉強合宿で得たペースをその後も維持できた生徒は、以降も非常に学力の伸び率が高くなる実績がある。また、全コースを通じて、合宿中に仲間意識とまとまりが強まった。合宿後に行われた進路学習では、志を同じくする者が集まって話し合いや進学希望大学へ見学に行くなどの活動が行われたが、合宿での仲間意識が反映したのか、全員が非常に活発に発言し、行動することができたという。
--生徒の声
■合宿に参加して
今まで2泊しかしたことのない僕に4泊5日の合宿が無事に終われるか初めは不安だった。毎日勉強ばかりで、あんなに勉強したことは今までなかったのでとてもしんどかった。だからこそ、最後の1日が終わった瞬間、今までにない達成感があった。この勉強合宿の経験を生かして、これからどんどん勉強していきたい。
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日頃とは違う緊張感の中で 目標に合わせた指導を行う
--2年・進学講習とサマーチャレンジ
最後のサピエンス・クリアコースとなる現2年生は進研学力模試の実施後に、進学講習とサマーチャレンジが行われた。
「教師から与えられる課題をこなしていた1年次とは違い、2年生は自ら目的を持った学習ができるように指導します。今回の夏は、受験のきっかけを作る最後の時期として、『目標』をキーワードとした講習を行いました」。
高2学年主任の津野和彦先生が話す目標とは、コースの中で文理に分かれているクラスをさらに細分化し、自分の希望する進路やレベルに合わせた講義を受けるというものである。
サマーチャレンジは、前年の冬に2年生対象に行われたウィンターチャレンジと同じく、大阪予備校の特別講習会(50分・2講義)を中心に行われる。また、予備校の自習室も自由に使えるので、普段とは異なる緊張感の中、前向きな学習姿勢を養いながら、高度なレベルの講座や勉強ができると好評である。一方の進学講習は1日に90分の講座が3本組まれており、かなり厳しい時間ではあるものの、個々の進路や希望に合わせた指導を行うものであるため、生徒の集中も通常授業より高く、理解度も深い。これを学年を2つに分け、4日間ずつ交代で受講するのだ。
「このほかにも、毎年良い改革を続けることで、生徒の実績を年々アップさせています。生徒たちの計り知れない力を伸ばすのは、対応する教師の熱意です。熱意を持った改革で、生徒の状況に合わせた指導を行うこと。これが啓光の学習指導方針なのです」。
厳しい中にも、生徒が何を求めているかを見つめる教員の誠意ある数々の講座やイベント。だからこそ、どんなに辛くてもそれを乗り超え、自信と実力をつけていく生徒が生まれるのである。
今回の取材は1学期終業式の日に行ったが、この日は保護者も学校へ来て、生徒の成績や進路相談を受けていた。また終業式後、東京大学の生物応用化学部教授 田所忠弘氏による「脳活動の原点は食事にあり」出張講義が行われた。現状の食事の問題点や脳と栄養の基礎知識に関しての知識が生徒とその保護者に伝授され、日々の食事が子どもの発達につながることを少しでも詳しく知ろうとする保護者が熱心に聞き入っていた。
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