知的好奇心を刺激する地球学で
学びの土台を築く
京都学園は、1925年に京都商業学校として設立された。戦後、いくつかの変遷を経て1990年に校名を京都学園高等学校に変更。2000年には中学校を開校し、中高一貫教育を開始した。
現在は高校に、海外に長期留学する「国際」、難関国公立大を目標とする「特進ADVANCED」、国公立大や難関私大をめざす「特進BASIC」、有名私大進学をめざす「進学」の4コースを設置。中学校は、既存の3コースの名称を今年度より「国際」「特進ADVANCED」「特進BASIC」に変更し、高校との繋がりを明確にした。このうち「国際」と「特進BASIC」は、高校進学時に生徒の適性に応じてコースを再選択できる。しかし、「特進ADVANCED」は原則として6年一貫となる。中学入学時の1クラス25名が高校進学後も継続され、外部からの入学生とは混じらない。
その理由を、教務部の山田尊文部長は「中学段階から、2020年の大学入試改革を想定した6年一貫カリキュラムを展開していきます」と説明する。
近年、同校は進学実績を飛躍的に伸ばし、今年は国公立大に61名が合格した。一貫生からは東大や京都府大などの国公立大に14名の合格者を出している。一貫生に共通しているのは、入学後の伸びが大きいことだ。
「東大に合格した生徒は、中学の地球学で自分の方向性を見つけていきました。目標がクリアになれば受験勉強も頑張れます」と山田部長。
地球学とは、同校独自の探求型学習プログラム。教科の枠を超えて生徒の知的好奇心を刺激し、興味の幅を広げる。
例えば、京都の深泥池に生息する氷河期以来の動植物を探したり、龍安寺・鹿苑寺では歴史を学び、鶏や豚の目を解剖したりする。昨年は熊本県まで出かけ、阿蘇カルデラの調査も行った。
学年末には、1年間の学びの集大成としてプレゼン大会が開催され、学年ごとの予選会を勝ち抜いた生徒が本選に進出し、優勝を争う。
「先輩の発表を見て、下級生が『次は自分だ』と意欲を燃やしています。プレゼン大会という伝統が生まれつつあります」
生徒の熱意と教員の情熱が融合し
進学実績躍進へ
地球学とともに学習意欲を高めているのが、きめ細かく設定された学力伸長講座だ。
始業前の英単語強化講座「Vocabulary Building」と朝テスト(英語)に加えて、終礼時は終礼テスト(数学)がある。放課後には、生徒の興味や学力に応じて英語と数学の講座がいくつも用意されている。
例えば、「超英語」は英検2級合格者を対象とした準1級対策講座。「超数学」は2・3年生を対象に、高校数学の難易度の高い問題で知的好奇心を高める。また「Follow up」講座は、苦手分野を抱えた生徒のための補充講座。その他、「Brush up」講座、「英語模試対策」講座など多彩だ。
「生徒一人ひとりの状況をきちんと把握し、弱点を克服し得意を伸ばすためにサポートします」
高校では、進学目標に応じた講座を数多く設定している。その中の難関大学対策講座「超数学」は、東大・京大の難問にチャレンジする。高校1年から受講できる。一緒に勉強した上級生が東大や京大に合格することで、モチベーションがさらにアップするという。各講座は始業前30分と放課後の4時間を利用して行う。部活動に取り組む生徒のために、19時からの講座も設定している。
この至れり尽くせりとも言うべき講座設定は、すべての生徒を伸ばしたいという思いの表れだ。
山田部長は、「生徒の熱意と教員の情熱が融合したときに、生徒は大きな力を発揮します」と話す。
|
創立者の思いを受け継ぐ
国際理解教育
京都学園は、「世界の舞台に堂々と自分の意志で立ち、行動できる人を育てる」という建学の精神を継承し、四半世紀前から全生徒が海外ホームステイを経験するなど、先進的な国際理解教育を実践してきた。
国際コースでは、高校2年次にイギリスまたはカナダに7ヵ月ないし10ヵ月留学する。生徒たちは英検1級や準1級などハイレベルの資格を取得し、国際教養大や早慶上智、カナダのUniversity of Torontなど、国内外の難関大学に進学している。
今年は、国際コースが牽引してきた「KOA Global Studies」(コア学)が文部科学省より、SGH指定を受けた。‘KOA’とは、「幸せ」を意味するマオリ語。世界の人々の幸福という観点から、「食」をテーマに海外の提携高校や国内外の大学と連携し、アジア・アフリカ地域における「国際開発協力モデル」「ビジネスモデル」を研究・開発する。
今年は国際コースの2年生有志がフィリピンで現地校と交流しながら食や水、貧困の問題を研究する。また、国際食糧農業機関(FAO)の協力を得てエチオピアなどアフリカ地域との関係も構築していく考えだ。
コア学を通して、いま世界が抱えている問題への関心と、コミュニケーション能力、協働力、問題解決力などを身につけたグローバルリーダーを育成していく。
「すでに多くの卒業生が世界で活躍しています」と話す山田部長は誇らしげだ。
少し前に教え子の1人がヨルダンから一時帰国した。現地では青年海外協力隊の一員として、スポーツを通じて青少年育成に携わっている。彼女は「特進ADVANCED」コース出身。在学当時は柔道で全国大会に出場するなど活躍していたが、英語はそれほど得意ではなかったし、海外にもさほど興味を持っていなかった。しかし、中高6年間で経験した海外研修が海外に対する敷居を低くしたのかもしれない。
「特に高校2年のときにケンブリッジで3週間、さまざまな国の学生と机を並べて勉強した経験が大きいと思います。経験は一生の財産、経験は力となります」。
学園の創立者・辻本光楠は、日清戦争後の1897年に15歳で単身渡米した。創立者のDNAは、いまグローバルリーダーという新しい形となって受け継がれている。
|