フロンティアは学びの最前線
滝川第二中学校・高等学校は今年、国公立大学に80人が合格し、合格実績を大きく伸ばした。クラブ活動でも、6月早々にインターハイ出場を決めたサッカー部を初め、野球部、陸上部などが活躍ぶりを見せている。文武両方で活気づくなか、滝川第二は次なる進化のステージをめざし、2016年の大改革に着手する。
常則之校長は、「本校の3つの校訓を前面に打ち出し、有為な人材を育成することが改革の原点です」と話す。
高校は、現在の「スーパー特進L」「特進L」「L」の3コースを、フロンティアコースとして難関国公立大学をめざす「スーパーF(フロンティア)」と国公立・有名私大が目標の「クリエイティブF」の2コースに変更する。募集定員は、「スーパーF」30名、「クリエイティブF」35名。また、現行の「C」コースは90名から100名に増員する。
「C」コースは、プロのアスリートや体育系・芸術系大学進学をめざすコース。これまでにサッカーの岡崎慎司選手らを輩出している。在校生には、陸上の投てきで2020年オリンピックの候補選手もいる。
「同じ学内で、トップアスリートと超難関大学をめざす生徒が互いに刺激し合い、自分の得意分野で才能の花を開かせる。その空気感が本校の特徴です」
今回のコース改編により、「F」と「C」のコースの特質を明確化し、それぞれ世界で活躍できるトップ層を育成していく。
新コースの「フロンティア」は、「学問の最前線、最先端」という意味を持っており、「学びの最前線」として、世界で活躍する人材の育成を目的としている。「F」コースの教育目標は、『生きる力、3つの育み』〜自学自考の育成、感性と倫理観の育成、世界で活躍できる国際性の育成〜とし、知識編重とならず、「考える力」と「人間教育」にも重点を置く。
2020年大学入試改革に
向けて英語力強化
新しい2つの「F」コースに共通しているのは英語力の強化だ。
山本晃久教務部長は、「今の時代に英語は必須。2020年の大学入試改革に対応していくためにも、文系理系ともにカリキュラムの単位を増やしていきます」と話す。
英語授業では、4技能(読む、聞く、話す、書く)を強化する構成で、英語力の向上を目指す。英語力の目標は英検準1級。英検講座や留学(希望者対象)も実施。
「F」コースは、2年進級時に本人の希望と学力により「クリエイティブF」から「スーパーF」への転コースが可能だ。ただし、学校側からの指導で逆パターンもあり得る。
「入れ替えることで『スーパーF』は常に高いレベルを維持できます」
「スーパーF」は、2年次以降も国公立対応5教科重視のカリキュラムだが、「クリエイティブF」は私立型と国公立型に分かれる。
7時限目までの授業の後に行われる週3回の90分講習や長期休暇中の講習、学習合宿など、学習面でのサポートは従来と変わらない。さらに「スーパーF」の放課後講習は、校内予備校”フロンティアゼミナール“として、今回初めて、大手予備校で教鞭を執る講師が担当する。
山本教務部長は、「『スーパー特進L』『中高一貫コース』で培った難関国公立大合格のノウハウを注ぎ込みます」と自信を見せる。
また、これまで「スーパー特進L」で禁止されていたクラブ活動が「スーパーF」では解禁される。生徒からの強い要望に加え、チームワークなどを部活で学ぶことも重要な教育活動であるとの判断からだ。
「クリエイティブF」の私立型では、授業時間に余裕ができるため、様々な取り組みができる。例えば、生徒が大学に通って授業を受ける高大連携や探究授業など。また、総合学習では、プレゼンテーション力を高めるプログラムを取り入れ、多様化する入試に対応できる創造力を育成する。 |
グローバル教育に
体験型実践学習を融合した
独自のプログラム
中学校もコースを再編成する。現在の「進学一貫」を廃止し、「プログレ」25名と「特進一貫」80名の2コース制に変わる。これは入学する生徒の学力レベルが全体的にアップしてきたことによる。
「特進一貫」が2クラスになり、さらに進級時に「プログレ」に変更のチャンスがあることから、生徒間の流動性が高まる。
「プログレ」の1期生は現在中学3年生。1年次より担任してきた金子幸平教諭は生徒について、「自分たちは1期生だという意識が強く、非常に頑張り屋さん。勉強も部活も一生懸命です」と顔をほころばす。
授業はハイペースで進められ、中学3年から全教科が高校1年の内容に入った。放課後も週3日は18時半まで100分講習。このうち数学の講習は、高校に先駆けて予備校の講師が担当している。
昨年6月に全員が英検3級に合格した。すでに準2級合格者も10人以上。中学3年の終わりまでに全員2級合格が目標だ。
1期生の学力の伸びは目を見張るものがある。Z会アドバンスト模試の英数国の平均偏差値は、中学1年時点で全国13位だったが、1年後の中学2年ではベスト8に入った。これは学習量の多さだけでなく、体験型実践学習による動機づけの効果といえる。
これまで、発電所を見学したり、岡山の川崎医大で研修医の実習を見せてもらったりした。中学2年の締めくくりにはJAXA(ジャクサ)を訪問。翌日は、東大の学生と創薬に関するディスカッションを行った。中学3年の11月にはロンドン修学旅行が待っている。「プログレ」は他コースとは別に、ケンブリッジ大学の研究施設で働く日本人研究者と交流する予定だ。
「彼らは別世界の人じゃない。自分たちも頑張ったら海外で活躍できるんだと知ってもらいたい」と金子教諭。
世界に羽ばたく人材の育成をめざして進化を続ける滝川第二中学校・高等学校。「プログレ」1期生が、その一翼をしっかり担っている。
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