「プレップコース」の
大学合格率向上が原点
上宮高等学校のコース編成は、難関国立大学を目指す「パワーコース」「特進コース」、国公立大学を目指す「英数コース」、私立大学を目指す「プレップコース」「一貫プレップコース」「技能コース」の6つ。最も生徒数が多いのが「プレップコース」だ。
有名私立大学などへの高大連携・指定校制推薦入試を受けるプレップコースの生徒は多いが、「共学1期卒業生で、この入試枠を使って大学に入学できた生徒は約3割。生徒のモチベーションを上げる工夫などを授業に取り入れたが、前年度に比べて大きな躍進はできなかった。もっと実力をつけてあげたかった」と進路指導部・部長の畑中広教諭は話す。過去3年間、高大連携主任とプレップコース主任を兼務していた頃を振り返って悔しさをにじませた。
他のプレップコースの先生たちも同じ思いを抱えながら、日頃の授業と補講習、進路指導、その他、クラブ活動や学校行事に関わり、多忙を極める日々を送っていた。
ある時、この課題に一筋の光が射した。同校の非常勤講師・村田亘先生の力強い一言だった。「予備校の先生に協力を求めれば、何とかできそうだ」と。「大学合格講座」が実現に向けて大きく動き出したのだ。校内には、村田先生の他にも予備校の講師を兼務する先生が何人かおられ、予備校とのパイプ役になってもらえるという安心感があった。
このことが功を奏し、中間会社を介さず直接運営するめどが立ち、その結果、受講料もかなり低く(1時間あたり700円)設定できたという。各担任先生の理解のもと、学校も放課後(通常の補講習が終了した17:15〜20:00)に校舎を開放し、通年開講するという体制を組んでくれた。
運営スタッフは、教頭の殿井鉄夫先生を始め、進路担当者や予備校の講師を兼務する先生など7名。講師採用や講座企画、広報まで、立場の垣根を越えて、抜群のチーム力を発揮している。
実践的でユニークな講座に
全校生徒の関心が高まる
予備校の講師が学校の教壇に立つ「校内予備校」は、他校にもある。だが、学校目標の「教育力の向上」に沿って、特に「大学進学実績の向上」を目指してスタートさせた「大学合格講座」は一般的な「校内予備校」と一線を画す。日頃の授業や補講習によって培われた基礎学力を、大学入試に対応できる学力に転換するのが狙いだ。また、大学入試問題演習に取り組むことで、日頃の授業で習う事柄の重要性に気付かせ、授業を相対化させる側面もある。
「全コースを対象に希望者を募っても、果たしてどれだけの生徒が集まるのか。多少の不安はあった」と畑中部長。「上宮の生徒は素直で真面目だ」と評価されることが多いが、反面、やや積極性に欠けるとみていたからだ。
しかし、初年度の高3生・1学期の参加人数は133名(延べ265名・全15講座)にも達し、生徒のニーズの高さを確信。今年1月に、受験生への意識切り替えを目論んで開講した、3学期の高2生対象「大学合格講座」の参加人数は190名(延べ465名・全18講座)。プレップコース、一貫プレップコースはもちろん、パワーコース、特進コース、英数コースの国公立志望の生徒も多数受講した。今年度の高3生・1学期の参加人数は236名(延べ611名・全29講座)とさらにその人気ぶりに拍車がかかり、実に高3生の3割強が受講している計算だ。
生徒の“やる気”にスイッチを入れた要因は何か?スケールメリットを活かした安価な受講料、予備校への通学時間の削減も大きな魅力に違いない。しかし、「大学合格講座GUIDE BOOK」を開くと、受講意義が生徒の心にダイレクトに届いたのではないかと窺える。 |
優秀な大学への受験を誘導するのではなく、生徒が「なりたい自分」になるため、希望に合った「第一志望大学」への現役合格を目指す講座であることが明確に表現されている。開講講座の種類の多さも魅力のひとつ。そのため、ベネッセ(進研模試)の学習到達ゾーン(GTZ)を関連付け、各講座の授業内容のおよそのレベルを記し、申し込みの際の判断基準を提示する。
本登録までに「お試し講座」の受講ができるのもユニークだ。1週間の1回目の講座は全て無料。自分の学力レベル、講師との相性等を体験し、講座とのミスマッチを防ぐ。生徒の視点を重視した細かい配慮が感じられる。
英語力、人間力を身に付ける
「土曜スペシャル講座」がスタート
多数の講座を同時開講している「大学合格(準備)講座」に、さらに新たな魅力が加わった。今年度開講した「土曜スペシャル講座」だ。生徒の英語力への興味・関心を引き出し、英語力の向上をサポートするのが目的で、「英検対策講座」(中3生〜)・「修学旅行英会話」(高2生)がすでにスタートし、好評だ。
さらに9月からは高1生を対象に、「修学旅行英会話」を別講座で立ち上げ、ネイティブの英語の先生から学ぶ機会を設ける。高校では、「アメリカ・ボストン勉学旅行」と「ドイツ・チェコ修学旅行」が実施されているが、旅程には観光や見学だけでなく、現地校での昼食会やキャンパスツアーなど、英語でコミュニケーションをとるプログラムが用意されている。
同校の進学実績は共学化以降着実に伸びているが、それだけでは「上宮の教育力向上」という学校目標には到達しない。生徒が様々な能力を養う必要がある。英語力、コミュニケーション能力もその一つと考えての開講である。
畑中部長は、「最も大切なのは日頃の授業、次に補講習。それを理解していないと大学合格(準備)講座の効果は期待できないし、人間力も養えない」と、「なりたい自分」へのステップを間違わないよう強調する。
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