気体の発生実験、爆発音に歓声
「手順を説明します」。
小林ひかり先生が声をかけると、白衣姿の生徒たちが実験台を取り囲んだ。特進コースの生徒24名だ。
今日は文系・理系合同の化学実験。化学の授業は、文系が「化学基礎」2単位に対して、理系は「化学」4単位。進度も深度も異なるため通常は別授業だが、文系の進度が追いついた時点で一緒に実験を行う。今回は、水素・アンモニア・一酸化窒素と二酸化窒素を発生させ、それぞれの製法と気体の性質を確認する。黒板には、あらかじめ3種類の実験の概略図と化学反応式が板書されている。
小林先生は、助手役の生徒に手伝わせて実験を見せながら、手順とポイントを説明していく。水素は、亜鉛と希硫酸を混ぜて発生させ、水槽に沈めた試験管に集める。生徒たちもよく知っている水上置換だ。試験管2本に水素を集め終えたら、まず1本目の試験管の栓を外してマッチの火を近づける。「ボンッ!」と小さな爆発音。試験管を持っていた助手がびくっと首をすくめ、生徒たちから笑いが起こった。続いて2本目。今度は「キュッ」と音がしてマッチの火を吸い込んだ。予想通りの結果に歓声が上がる。1本目の試験管には空気が混ざっていたため爆発が起こり、2本目は水素だけが集められていたからだ。
続いてアンモニア、さらに一酸化窒素と二酸化窒素の発生も実際に実験を見せて説明を終えた。この後、生徒は4人ずつに分かれて実験を行う。実験の順番も、どのように進めるかも生徒にまかされている。
小林先生は、「全部できなくてもいいから慎重に丁寧に」と指示。「実験に一番大事なことは?」と生徒に問いかけると、一斉に「あんぜ〜ん!」と返ってきた。先生と生徒の絶妙な掛け合い。思わず笑みがこぼれる。
見て、聞いて、嗅いで、
五感で学ぶ
6つのグループに分かれた生徒たちは、てきぱきと実験の準備にとりかかる。器具の取り扱いも手際がよい。このクラスは多くがクラブに加入していて、国体出場など全国レベルの選手も何人かいるとのこと。クラス全体が明るくて積極的だ。
アンモニアの発生から始めたグループは、試験管から立ち上ってきた臭いに顔をそむけながらも、化学反応が確認できてうれしそう。その後の濃塩酸やフェノールフタレインを使った確認作業も迷いなく進めていく。手順をしっかり呑み込んでいるようだ。 |
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隣のグループに目をやると、リトマス試験紙を手にしている。今日の実験では使わないはずだが……。聞いてみると、赤褐色の二酸化窒素を水に溶かしたら無色になった。しかし、硝酸ができているかどうかは分からない。そこで、とりあえずリトマス試験紙で酸性であることを確認したという。納得いくまで調べたいという気持ちが伝わってくる。
実験室のあちこちで水素の爆発音が聞こえ、歓声と笑い声が響く。小林先生はグループを見て回り、アドバイスを与えている。どのグループもひとつひとつの実験を着実に進めている様子だ。
そして終業5分前。すべての実験を終えた生徒たちは一様に満足げな表情。ある生徒は、「文系だけど実験は楽しい」と目を輝かせた。気体や溶液の色が変わったり、音が鳴ったり、五感で楽しめた1時間。実験結果にも納得できたようだ。
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