2000万人の外国人旅行者
その個々が満足できる日本観光のために
戦後の高度成長期、景気の上昇に合わせて旅行業界では国内・海外旅行のプランを多彩に打ち出した。新幹線の開通、ジャンボジェット、大型フェリーの就航、高速道路の開通など交通インフラも整備され、多くの人が旅行へと繰り出したが、その多くが団体旅行。しかもロンドンとパリとローマを数日間で巡るという駆け足旅行なのだ。全員で同じ場所へ行き、同じものを食べ、同じホテルで泊まるというスタイルのマス・ツーリズム(団体型大衆の観光)が日本中で流行し、それをリードしたのが、出発地の旅行会社であった。“より早く、より遠くへ、より多くの人を”旅行させることにより、日本の旅行会社は利益を伸ばし、大阪万博、沖縄海洋博などのイベントのインパクトも加わり、各社とも急成長を遂げた。
「これを『発地型観光(アウトバウンド観光)』と呼び、典型的な昭和型のジャパンモデルでした。しかし、90年代になると、個人で一国や一都市に留まり、観光や買い物など、自分で計画を立てる個人型が増加しはじめ、2000年代からは、地域の魅力をより深く体験する『着地型観光(インバウンド型観光)』が人気となってきたのです」
神戸山手大学の観光文化学科教授として教鞭を取る小野田金司学長補佐は、その原因のひとつが、インターネットの普及だと語る。ネットを使えば、個人で観光地やテーマパークなどへの計画を立てたり、ホテルや交通チケットを入手することができる。そのため現地までは自分で行動し、目的地の旅館や観光地での体験を案内するガイドを求める旅行者が増えた。そしてここ数年は、訪日外国人客の増加もあり、個人旅行のリクエストに答えるよう、現地のガイドやナビゲーターが必要とされはじめたのである。
「もちろん、インターネットやSNSの普及で、着地型観光は日本人だけでなく、海外から日本に来る観光客にも人気です。訪日外国人客のリピーターは、日本でのショッピングや和食や文化体験をしたいというニーズが高まっています。この要望に答え、売上を伸ばすことができる人材育成が、神戸山手大学に新設した『観光文化学科』が推し進めている学びです」(小野田学長補佐)
2015年、日本を訪れる外国人観光客は1800万人程度と予想されており、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年の2000万人の目標は、数年早まる可能性も出ていると、小野田学長補佐は語る。アジア各国は、高度成長で海外観光客が急増、この新市場をターゲットにビザの緩和や円安、免税などの政府主導の戦略を展開。2020年には、年間4兆円規模の市場に成長、観光サービス分野で29万人規模の新規雇用が生まれると予測されている。つまり、インバウンド観光は日本のGDPを押しあげる新しい輸出産業の切り札であり、これこそが観光立国である。
このインバウンド観光が注目され始めたのは、2013年東京オリンピック・パラリンピックが決定した後。まだ新しい分野である。神戸山手大学では、国内の他の観光系大学や専門学校に先んじて、いち早くインバウンド観光教育に取り組んでいる。数年後にインパウンド型観光客が大量に増加した日本各地で、あらゆる分野から求められる人材に成長することができるのだ。就職活動で苦しむ必要がないということだ。
日本文化と異文化の知識と語学
自ら一歩踏み出す行動力を学ぶ
インバウンド観光教育の特徴は、異なる価値観を理解し、自分の考えや日本の魅力を的確に伝えるコミュニケーション力を備えた人材の育成と自ら一歩を踏み出す勇気ある行動だ。神戸山手大学では、グローバルコミュニケーション・観光文化・観光ビジネスの3つのフィールドを組み合わせて語学力、文化的素養、社会的実践力を磨く。
訪日外国人客に日本の魅力を伝えるには語学力が必要とされるが、それ以上に自らが日本の魅力である文化を知ることが大切である。そしてそれを体験するためのマナーやルールを持ち合わせていなければ、完全なサービスを提供することはできない。また、外国の文化、宗教などを学び、相手にとってのタブーや慣習を知ることで、相互理解をうながし、スムーズな観光を導くことができる。そのような観光文化、グローバルコミュニケーション系科目が充実している。その上、実践力を磨ける観光ビジネス系科目も各観光業界出身の実務家教員たちにより、十分ラインアップされている。 |
「神戸山手は街全体が異文化交流していると言っても過言ではない街にあります。その中で異文化の知識や語学力の修得はもちろんですが、自ら相手に向かい、一歩踏み出すことができる力も養っていきます」(小野田学長補佐)
初年次から「阪神淡路大震災を風化させない」をテーマに、神戸で実施される日本最大のチャリティロックフェス「COMIN'KOBE」のボランティア業務をキャリア科目に取り入れている。約3万5千人を集客し、募金、会場設営、グッズ販売や来場者の誘導と大活躍。それを指導するのは上級生である。これもリーダープログラムとして演習科目となっている。今年は募金約740万円、グッズ販売約2000万円の大きな成果を上げている。教室以外にも、地域社会を盛り上げ全国に情報発信するこういった若者主導のイベント経験を通じて、自分から相手のために動く行動力を身に付けていくことができるのだ。
グローバルな知識とフットワークの軽い積極性を合わせた人材を育成する神戸山手大学。年度内には複数のオープンキャンパスなどが設定されており、観光文化学科をはじめ、神戸山手大学の良さや特徴を詳細に知ることができる。2016年に入学する学生が卒業するのは東京オリンピック・パラリンピック開催の2020年。インバウンド元年である。
オープンキャンパス2015
7/12日・7/26日・8/8土・8/16日・9/5土・12/19土
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