機能性とデザインを
兼ね備えた新校舎「翠嵐館」
創立90周年記念事業として建設された新校舎は4階建て。「翠嵐館」と名付けられ、1月31日に竣工式が行われた。
建築コンセプトは、「永く愛され続け、永く生き続ける建物と環境」。耐震性と耐久性が高く、自然通風や採光に配慮した「人にも環境にも優しい」つくりになっている。外観はライトブラウンの落ち着いた色調で、既存の校舎と中庭を挟んで連結。調和のとれたモダンなデザインだ。
1階には600名収容の多目的ホールや特別教室、90席のブースを備えた自習室を配置。多目的ホールの全面ガラス窓は中庭に面し、窓いっぱいに広がる緑が目を楽しませてくれる。
2階から4階は中学のHR教室と職員室。さらに2階には、4階まで3階層吹き抜けの新体育館を設けている。体育館のステージ奥の暗幕を左右に開くと、南向きの全面ガラス窓から、自然光がたっぷりと降り注ぐ。冷暖房も完備され、授業やクラブ活動の他、各種イベントなどにも利用される。新体育館は京都学園の3つめの体育館。この体育館完成により、既存の第1体育館は改修されて、より充実した体育の授業、部活動が展開できる。
4月8日、新体育館において90回目の入学式が行われ、翠嵐館が新入生たちの夢と希望で溢れた。
人々を幸せにするために考え
行動するグローバルナビゲータを育成
京都学園は昨年度SGHアソシエイト校に選ばれ、今年度はSGH校の指定を受けた。SGH事業とは、文部科学省が2014年度より開始したもので、社会課題に対する関心と深い教養、コミュニケーション能力、問題解決力などの国際的素養を身に付けた、将来国際的に活躍できるグローバル・リーダー育成を目的としている。今年度は全国で56校、京都府では4校が指定された。
京都学園のテーマは、「21.3世紀のグローバルナビゲーター育成」。
竹村慎吾国際部部長は、「21.3世紀は、今の高校1年生が30歳になる2030年を意味します。そのときに世界で活躍するには何が必要かというところからスタートしました」と説明する。
同校がグローバルナビゲータと定義するのは、「豊かな創造性と旺盛な好奇心があり、多種多様な国や文化、立場、言語を乗り越え協働でき、多角的な視野をもって専門的知識と関連づけられ、失敗を恐れず実践し、行動し続ける人物」。そのために求められる力として、批判的思考や起業家精神、コミュニケーション力など7つの力と、英語運用力を挙げている。
具体的な取り組みのひとつは、昨年度から国際コースでスタートした「コア(KOA)・グローバル・スタディーズ」。‘KOA’は、マオリ語で「幸せ」という意味。世界の人々を幸せにするという観点から命をつなぎ文化の多様性の象徴である「食」をテーマに、食を取り巻く環境問題を考え、アジア・アフリカ地域における国際開発協力モデル・ビジネスモデルを創出する。
「ソーシャルビジネスや国際レベルでの開発援助まで考えて実践させたい。たとえ失敗しても、その経験が将来に役立ちます」。
すでにJICA(国際協力機構)エチオピア事務所とメール交換を始めた。今後は現地でのフィールドワークも視野に、エチオピア、フィリピン、ベトナムやインドネシアなどの協働校と交流していく予定だ。
国際コースだけでなく、他のコースでも「食」をテーマに考えたり、授業にアクティブラーニングを取り入れるなど、学園全体に「グローバルナビゲータ育成」の意識が高まっている。
国際教養大学に8年連続の合格者
「本校の目的は、建学の精神に則って人間力を育成すること。そのために長年取り組んできた国際交流の実績が評価され、今回のSGH指定につながったと思います」と竹村部長。
中学・高校の全生徒が在学中に少なくとも1度は海外ホームステイを経験する。この画期的な取り組みを始めたのは25年前。以来、着々と重ねてきた国際交流により、提携校は100校を超えた。
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国際コースでは高校2年次に、イギリスまたはカナダに7ヵ月から10ヵ月の留学を経験する。カナダでは、1校に1人が基本。ひとりぼっちでスタートする留学生活。精神的な自律が求められる。
「単に留学したいという動機では耐えられません。何のための留学か、自分の将来にどうつなげていくのかといった明確なビジョンを持てるように指導しています」。
もちろん授業についていける英語力も必要だ。国際コースでは、1年次終了までに4技能すべてにおいてCEFR B1,B2レベル(英検2級、準1級程度)の英語力を養成している。授業は、「英語が好きだから」と入学してきた生徒も、1ヵ月後には音を上げるほどに厳しい。ネイティブ講師による授業は、プレゼンもレポートもすべて英語。クラス全体が留学という共通の目標に向かって支え合い、協力し合いながら英語力を高めていく。
留学を終えて帰国した生徒たちは皆、人間的に成長を遂げている。
多くの生徒を見てきた竹村部長は、「各国から集まった留学生と交流していくなかで互いの価値観の違いに気づいたり、彼らの目的意識の高さに圧倒されて、自らを省みるようです」と笑顔で話す。
英語力も英検1級やTOEFLiBTで110点越えなど目覚ましい伸びを見せる。
帰国後は受験勉強が待っている。多くの生徒は語学系以外の、自分の目指す分野の学部に進学する。コミュニケーションツールとしての英語は充分に身に付けたからだ。難関の国際教養大学(秋田)には8年連続合格者を出している。今年は3名が合格し、全国3位にランクされた。海外の大学に留学する生徒もいる。今年は中高一貫生が現役で東京大学理科T類に合格した。年々進学実績の向上がうかがえる。
90年前の創立者の志は、世界で活躍するグローバルリーダー育成へと確実に受け継がれている。
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