医学・歯学系大学を
目指すコースも設定
立命館中学校・高等学校の新キャンパスは、阪急「西山天王山」駅から程近い閑静な住宅街の中にある。正門を入ると、右手に第1グラウンド、左手に校舎棟(5階建)が見える。校舎棟の南には、第3グラウンド、体育館棟(地下1階、地上5階建、屋上テニスコート)があり、さらに南に第2グラウンド、体験学習棟が設けられている。校舎棟は、打放しコンクリート、天井等に使われた長岡京の竹が印象的。和洋の融合が図られ、斬新でスタイリッシュなイメージだ。
「本校は、立命館大学とほぼ同時期に『清和普通学校』として創設され、今年109周年になります」と語るのは、校長の成山治彦先生。成山校長は、大阪府教育委員会を経て、立命館大学接続教育支援センター教授等を歴任。同教授当時には立命館中学校・高等学校の校長代行を半年間務めたこともあり、大阪教育大学理事を経て、今春、同校の校長として着任した。
さて、同校が長岡京に移転した狙いは、立命館小学校との接続を強化し、一貫教育のさらなる展開を図ること、通学圏を京阪神エリア全体に拡大すること、高大接続教育をより一層多彩に展開すること。これらにより、立命館学園全体の大きな発展につなげることにある。
立命館高校卒業後は、立命館大学や立命館アジア太平洋大学への進学に加え、医学・歯学系大学といった難関大学を目指す生徒も少なくない。そこで、同校では、次のコースを設けている。まず中学校1・2年で、小学校接続の一貫コースのほか、難関大学進学を見据えたAD(学力伸長)コース、基礎学力と探求心を育てる総合コースの3つがある。中学3年進級時に、難関大学をめざすMS(文理特進)コース、とコア(総合文理)コースのいずれかを選択する。コアコースにはGJ(グローバルジュニア)クラスもおかれる。そして、コアコースの生徒は、高校2年から、CE(文社)・SS(理数)・GL(国際)の各コースに分かれる。
「立命館大学には、医学・歯学部がないため、MSコースを作りました。4つのコースで、生徒の様々な進路に対応しています」と成山校長は言う。
文科省のSSH、SGH指定校
世界から集うJSSFも開催
同校の大きな特徴は、科学教育と国際教育に力を入れていることだ。
科学教育という点では、文科省のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に2002年度当初から3期13年にわたって指定されており、2011年度には「コア・スーパーサイエンスハイスクール」、2013年度からは「SSH科学技術人材育成重点枠」の指定も受けている。
「本校では、日本だけでなく世界の理数教育の先進校と提携しており、毎年11月に5日間にわたってJSSF(ジャパンスーパ―サイエンスフェア)を開催しています」と成山校長。世界(昨年度は18カ国、28校116名)と国内(同、12校)の高校生が一堂に会して科学をテーマに交流するというもので、SSコースの生徒が中心となって取り組んでいる。
一方、今年4月には、将来国際的に活躍するグローバルリーダーの育成を目的とした文科省のSGH(スーパーグローバルハイスクール)の指定も受けた。同校では、中3生全員がオーストラリアでの約2週間の海外研修を体験するほか、中2から高3の生徒が参加する海外ボランティア研修など、真の国際人を育むための様々なプログラムが用意されている。「本校では、年間約350名(海外修学旅行除く)を海外派遣しており、海外から約300名を受け入れています」と言う成山校長の話からも、同校がいかに国際交流を図っているかがよくわかる。 |
国際化の波の中
長岡京での新時代をつくる
同校では、いわゆる受験学力だけでなく、大学や社会で求められている問題解決型学力、探求型学力、コミュニケーション力の育成を重要視している。そして、その方針は、新校舎のデザインにも反映されている。例えば、校舎棟にある3層吹き抜けのアトリウム。ハウスと呼ばれる6つの教室群をつなぐように学校の中心に配されたオープンスペースで、その1階部分には、プロジェクタ、スクリーンが設置され、生徒たちが議論したり発表したりできるようになっている。また、200枚ものポスターが掲示可能なスペースもある。さらに、アトリウムと教室との間、教室と教室の間にはテーブルと椅子が置かれ、生徒たちにディスカッションの場を提供している。こういった場を多く設けている狙いは、アクティブ・ラーニングによる主体的な人材の育成にほかならない。
ちなみに、同校では「古くから生徒参加型の学校運営を行っています」(成山校長)とのことで、生徒会活動も活発。学校行事の多くは生徒が企画運営しており、今回の新校舎の設計等にも生徒会が参加したという。
新校舎に移転した今後も、立命館が目指すのは、社会が求めるグローバルリーダーの育成だ。もう一つの目標は、小中高一貫教育システムの完成。
成山校長は、「世界に羽ばたくグローバルリーダーの育成を旗印に、次の100年を見据えてがんばっていきたい。国際化の波の中で、長岡京での新時代を作っていきたい」と熱く決意を語った。
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