さらに多様な進路に対応
総合進学(A)コース
男女共学化から5年、京都橘高等学校では、男子の体育やクラブ活動のため今春には新しい体育館も完成した。彼らの積極性が良い影響を与えて、新しい校風も出来てきたという。
「男子が大きな声で挨拶するので、いつの間にかどの生徒も挨拶をよくするようになりましたし、それまでチャレンジしなかった大学や理系に女子が進学するようになりましたね」と木内正廣校長は共学化の相乗効果について喜ぶ。
同校では進路に合わせて、特別進学・国際教育・総合進学の3コースを設けているが、来年度より男子は受験制限のあった「総合進学(A)の一般」も受験できるようにする。このコースを生徒の多様な進路にきめ細かく対応するため、すでに以下のような改革が進行中である。
まず授業では、1年次の英語(6単位)に習熟度別のクラス分割授業を導入、少なくとも英検3級以上を取得し、上級学年につなぐ。また、1年次から2単位(英語または数学)の「自由選択科目授業」を週2回7限目に実施する。そして大学進学をより強く希望する生徒のために、3年次に「選抜クラス」を1クラス作り、進学対策を強化。語学に興味のある生徒には2年次で約10週間の「オーストラリア中期語学研修」を実施する。
「このコースはクラブ活動をやりたい生徒が多いのですが、クラブ活動で培った精神力や集中力があり、成績の良い生徒が多いんですよ。国立大に入った生徒もいます」と木内校長は話す。
特色ある特別進学(B)コースと国際教育(C)コース
男子が最も多い特別進学(B)コースは、難関大学現役合格を目指すコースで、「B1クラス」と難関国公立大学を目指す「B2クラス」に分かれる。進路実現のため、入学当初から積極果敢にチャレンジするカリキュラムが組まれている。
国際教育(C)コースは、生きた英語を身につけ、グローバルな視点で自己表現できる個性あふれる生徒を育てる。1年次の1月から2年次の12月まで全員が1年間オーストラリアに留学。ホームスティしながらまずは現地の語学学校で約3カ月の集中英語研修を受け、その後現地の高校で授業を受ける。帰国後も「e-learning」などを活用し、高まった英語力を維持・発展させ、志望大学への進学を実現する。
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大学も2005年度より男女共学に
高等学校の学校改革にとあわせて、来年度、京都橘女子大学も大きく生まれ変わる。
主な改革点は男女共学となることと、「看護学部」が設置されることである。これは京都の私立大学としては初めての試みで、より高度な知識を持った専門職として医療に貢献できる若者を育てる。その他キャリア教育を正規科目に組み込んだり、現代マネジメント学科を設置するなど、21世紀を見据えたカリキュラム編成を実施する。
京都橘高等学校の生徒には、特別推薦入学枠(40名)があり、受験料は免除なので、進路を考える上で選択肢の1つになりやすくなったと言える。
「開かれた学校」が生き残る道
入学式の際、木内校長は毎年保護者にむかってこう話す。
「これで子育てが終わったとは思わず、子どものサポートをお願いします。一緒に入学したつもりでどうぞ何回でも学校に来てください」。この言葉通り、同校では父母の会活動が活発で、学期に5〜6回は行事で集まり、春の総会には200名ほどが集まる。
懇談会、懇親会、学園祭の参加、歴史散策など1年間の多彩な行事に「卒業したら淋しくなる」という言葉が聞かれるほどで、当然学校づくりへの意見や取り組みも協力的である。
一方、生徒の要望は1学期の最後に実施される授業アンケートで吸い上げる。アンケートは簡単な各授業に関するものと、自由記述式で教師に言いたいことを書く2通りを実施している。授業アンケートは、各教科毎に教師が集まって互いの良い点・悪い点を是正することでよりよい授業に高めて行く。
個人の教師への要望は、2学期最初の授業で各生徒への回答として返される。
「生徒一人ひとりにきちんと返すことで、誤解があった部分はクリアになりますし、より信頼が深まるんですよ」と木内校長。
さらに、今年度「学校モニター制度」を立ち上げた。これは地域の小学校の教師や大学の副学長など外部の関係者4名を組織した会で、学校の改善点をアドバイスしてもらうものだ。
「これからは、学校をオープンにして様々な方に見ていただき、教育要求に応えて行くことが生き残る道です」と木内校長は強調する。少子化で公立高校が統廃合される中、毎年定員を超える入学者数を誇る同校の魅力は、このあたりにあると言えるだろう。今後も注目していたい。
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