「オーラル」授業を受ける中1の18名。新緑5月、毎日が新しい刺激の連続だ。稲岡章代先生は「生徒は驚くようなスピードで吸収し、学んでいる」と語る。
「子どもが言葉を覚えるようにナチュラルな導入を行います。身体と五感を全部使って見て、聞いて学び、最終段階で文字指導に入ります」
先生と生徒が「Hi!」と挨拶した瞬間、教室に笑顔があふれる。ALTのトビー先生が優しいトーンで、日付や時刻、天気を生徒に質問する。生徒たちの返事は元気だったり、自信なさげな様子だったりと様々だが、稲岡先生は張りのある明るい声を響かせ「Good!」「Wonderful!」「よく覚えていたわね!」と英語で相槌を打つ。時折、先生同士が短い会話をする。「昨日の天気は?」「嫌いな雨よ」「車にはシャワーになるのよ、キレイになったわ」と生徒も大笑い。先生の会話を凄い集中力で聞いている。間髪入れず「Let’s practice!」と発声練習へ。自然な流れに格段「速い」とは思わないが、まだ5分しか経っていない。稲岡先生は言う。
「生徒たちに『声を大きく』とか『聴きなさい』と言う必要が無いんです。自信がつけば声は自然と大きくなるし、会話に詰まっても誰かが助けてくれる。自分もサポートできるように、他の生徒の英語を真剣に聞くんです。」
伝えるために役立つ英語を
「自己紹介」の学習シートを配りながら「何枚必要?」と先生が尋ねると、「four」と生徒。すかさず稲岡先生が「4,please.」と補足。受け取ったら「Thank you」。マナーの言葉が教室にこだましていく。
「英語で学ぶのは『伝え方』。相手によって言葉や話し方を使い分けます。教員の会話もバリエーションの見本。将来、実社会で役立つ英語表現を伝えたいですね」
トビー先生が自己紹介をすると、生徒は先生を知りたい好奇心で一生懸命聞き入る。稲岡先生が矢継ぎ早に「英語」で質問する。「トビーはどこから来たの?」「ワシントンDC!」「好きなスポーツは?」「yoga!」「そのスポーツは…」「interesting!」生徒は先生達の誕生日も覚えていて、温かい関係が築かれている。紹介の最後は「Nice to meet you. and……SMILE!」と稲岡先生。口角を上げてニコッと笑顔よ、と繰り返すと「OK!OK!」と笑う生徒達。とても自然な「会話」だ。ペア練習の勢いのまま躊躇する間もなくステージで発表。聞き取りにくい名前も、ゆっくり発音すれば伝わるのよ、と稲岡先生は、早口な子、声が小さい子にも笑顔になる瞬間を必ず作る。パートナーをフォローし合って会話し、「使える英語」が増えると話も弾む。 |
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自他ともに大切にする言語活動
授業終了5分前にライティングへ。机間巡視でも稲岡先生は、生徒に応じた励ましを行う。「Wow, beautiful!」「Don’t worry」「You can do it!」。
「音声に続き綴りを学ぶので、書き出すと速い。意味内容も理解し、R・Lの発音も区別して書いています」
次回の授業はスピーチショー。聞き手もジャッジ(採点)を行い、メモの取り方も指導する。スピーチショーのポイントは3つ。
「ボイス・スピード・スマイルです。聞き取りやすい音量やスピードで言えているかどうか、聴き手の様子を見ながらスピーチをする。このような自立、自主性は中1にも必要です」
2学期のインタビューショー、3学期のドラマコンテストでは生徒が台本も書く。授業の最大のポイントは「アウトプット」と稲岡先生は強調する。
「一生懸命伝えよう!という姿勢で学ぶと、新たな自分が発見できる、異文化の人と思いやりや愛を分かち合える。英語を教養として学ぶことは、将来の幸せに確実に繋がっていきます。」
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