信愛教育推進委員会で
様々な改革に着手
大阪市内の地下鉄駅から徒歩5分と、交通至便な地に位置しながら、周りは静かな住宅街という学習環境に恵まれた大阪信愛女学院。幼稚園から短大までの総合学園である。
昨年、シスター以外で初の校長に就任したのは、松尾 誠先生。教頭、副校長を歴任した信愛生え抜きの先生である。松尾校長は就任直後に、校長、教頭、各部長からなる信愛教育推進委員会を立ち上げた。「校長ひとりの運営ではなく、集団指導体制でやっていきたいと思っています」と松尾校長は活動目的を語った。縦割りだけでなく、横のつながりを持つことで、教員全員が意識を共有するという狙いがある。
同委員会では、教員に意見を募り、様々な事案を検討、実現させてきた。建設的な意見が多く、まず実施したのが、中1の勉強合宿。昨年に続き今年も、1学期の中間考査後に、全員参加で2泊3日の勉強漬けの合宿を行った。食事と休憩以外は、ずっと勉強というハードな3日間で、きちんと勉強する習慣を付けることが目的だ。「今までこんなに勉強したことない。やればできる」という自信につながった生徒も多く、寝食をともにして学ぶことで、友達との絆が深まるというメリットもあった。さらに、今年から中2を対象にファームステイも実施。農作業のほか、ジャム作り、森林伐採なども体験した。普段できない体験をして、生徒たちは一回り成長したことだろう。
また、朝の小テストを中止して、放課後の補習を充実させたり、掃除の時間をバラバラになりがちな放課後から昼食後に変更したりしたのも委員会の決定によるものである。
高校では、将来の夢・職業に
直結するコースを展開
同校中学校では、7時間授業(実質週37時間)が行われており、学力に差がつきやすい英語と数学は、英語・数学嫌いをなくすために、習熟度別授業を実施している。また、今年から日々の学習状況を残す学習記録をつけることになった。学習・成績の記録として、進路指導にも活用されることになる。
中学校のコースは、1・2年は文理のみで、中3から国公立大を目指す文理T(高校でも内部生のみのクラス)と、高校で外部生と混合クラスとなる文理Uに分かれる。
高校のコースは、1年では特進と進学の2コースだが、2年から、国公立大学合格を目指す「国公立特進」、ハイレベルな文系進学を実現する「人文社会」、ハイレベルな理系進学を実現する「生命科学」、看護・医療系への進学を目指す「看護医療」、管理栄養士やフードスペシャリストを目指す「食物科学」、保育・幼児教育・初等教育への進路を目指す「発達教育」、勉強と各種活動の両立を目指す「総合進学」の7コースに分かれる。コースが細分化されており、しかも将来の夢・職業に直結するようなコースが多いのが特徴だ。総合進学コースは文系で、色々な選択科目をとることができるようになっており、芸術系、英語系の大学などを目指す。
今春の大学入試結果を見ると、神戸大学、北海道大学など国公立大学に9名、関関同立に58名の合格者を出したが、同校ではその数字は重視していない。「信愛の進路指導で大事なのは、第一希望の進路に何%が行けたかということです」と松尾校長。これは前校長・理事長の考え方で、信愛の全教員の総意でもある。 |
充実・多彩な
進路指導プログラム
信愛の大きな特徴のひとつに、進路指導プログラムの充実がある。高校1年の4月からコース選択のための特別授業が始まり、7月に大学見学バスツアー、進路選択のための適性検査、10月にキャンパス体験、11月にコース選択面談、12月にコース認定テスト・コース決定、2年の7月にコース特別授業、進路ガイダンス、2月に進路講演会、3年になると7月に進路面談、面接のためのマナー講座が行われる。これらは3学年とも主だったものだけで、模試などは含まない。現在、教育協定連携校となっているのは6大学だが、進学前提というわけではなく、あくまで教育内容を充実させるためのもの。さらに連携以外の大学等からも講座・講演会などに来てもらったり、生徒が出向いたりしている。
例年、7月には夏期進路特別プログラムが用意されており、3日間にわたって、大学見学バスツアーや将来の自分探しにつながる講演会、講座が目白押し。取材当日も、ユニーク学級訪問(本誌28ページ参照)で紹介した以外に、高2を対象とした和歌山大学宇宙教育研究所、近畿大学生物理工学部・湯浅農場見学が行われていた。
来年130周年を迎える同校が展望するのは、150周年時の信愛のあり方。すでに同校では、20年後を見据え、将来構想委員会を立ち上げて検討に入っている。「今の在学生に最高の教育を授ける努力をしていくことが、3年後につながる」と語る松尾校長。その言葉に信愛、生徒への愛があふれていた。
ぜひ、入試説明会、オープンキャンパス等を利用して、信愛に流れている“風”を感じてほしいと思う。
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