学びは『真似び』
真似のできる素直な心が
成長を促す
18世紀後半、フランス革命時の荒廃した社会で子どもの教育の重要性を考え、キリスト教的教育に専念する教育修道会を創立した福者マリー・リヴィエ。その精神を礎に一人ひとりの人格を何よりも尊重し、世界の平和と発展に貢献する人間の育成を続けてきたのが、1966年に創立した賢明学院中学高等学校である。共学化3年目の今年、若干女子生徒の方が人数的には多いものの、どの生徒も礼儀正しく素質のある素直な人格を持ち、のびのびと成長を続けている。
「学ぶことは『真似ぶ』こと。学業はまず真似をすることから始まります。その過程で自らを成長させるのには、素直さ、謙虚さが必要です。当校の穏やかで温かい校風に引かれて集った生徒は、皆その素質を持っております。その生徒の素質を磨き、多様な面で個々の特性を生かすようにすれば、必ず良い成長をもたらしてくれると思っています」
そう語る南登章生校長は、過去において実績をあげた経験を持つ実力ある教育者。挨拶をはじめとする生活指導には厳しい一方、通常閉ざされ、生徒だけでなく職員や保護者も立ち入ることのなかった校長室を開放し、生徒の悩みや相談を直接聞く環境を作り上げた。元々古文を指導する教員であった南校長の元には、現在も古文を学びにくる生徒がいる。そういった生徒たちに、自著の『古典文法のトレーニング』を与え、時間が合えば自ら生徒の教科指導にあたるという新校長は、在任期間の短さに比べ生徒や保護者から信頼は非常に厚い。生徒を大切に温かで人間味あふれる南校長。
満足度100%を
目指す学校へ
新コース体制を企画
来年度より南新校長指導のもと、第二の改革を始める賢明学院。南校長の第一の狙いは、医歯薬理系大学や関関同立・産近甲龍の大学への満足度100%の現役合格生を増やすことだ。そのため、特に高等学校では、自学自習能力を育成し、生徒が希望する進学先への確実な道を拓く必要がある。そこで現在大幅なコース編成に向けて動いている。医歯薬・理系進学コースを1クラス、特進文理コースを4クラス、進学コースを2クラスといった計3コース・7クラス編成が来年度から導入となる。
また、授業内容でも、既に改革が行われている。
朝に行われるお祈りの時間は厳かな心で一日の学習をするためにも欠かせない。その後、授業前の15分、中学は読書の時間を、高校ではテスト時間を設けられている。週のうち2日間は7時間授業だが、その他の日は7時間目には学年ごとの教科補習を行っている。
中学は定期テストを定着学習の期間とし、一度受けたテスト範囲を再度学び直しさせることで、完全な知識の定着を促している。これは習熟度の上昇にもなり、続く授業のレベルが格段とアップするという良い成果も生んでいる。一方、高校では自学自習教室を開放。放課後から夜8時まで「ラボ教室」を開放して、自習時間を確保している。これには現在約120名の生徒が保護者の許可を得て積極的に参加。高3では春夏冬の長期休暇中も実施。
「自学自習指導は今年の5月から始めたものですが、熱心なクラブ活動後も自習に参加するなど、生徒間で自学自習の定着が始まっています。生徒たちも自分をより良く指導してくれる学習環境が、学校内に作られるのを待ち望んでいたようです」
賢明学院はさらに国際教育にも力を投入。高1でのオーストラリアへ約1年の正規長期留学だけでなく、三ヶ月語学留学、夏期休暇中のオーストラリア短期語学留学、韓国のイングリッシュヴィレッジへの英語研修旅行、カナダ語学&スキー研修といった様々な機会も提供。その他にも創立者の故郷を訪ねる南フランスへの旅や交換留学など、語学だけでなく多文化に触れ、経験を積み、自らを大きく成長させるイベントが計画されている。 |
「素敵な才能ある生徒が実力を発揮できないのであれば、それは指導者の責任です。生徒を伸ばすための努力は全教員で行い、保護者の協力と信頼を得ていますが、さらなるステップアップのためにも、強い教科指導力を持つ新たな人材を現在も探しております」
この新カリキュラムで、比較的早い時期に実績が上がると考えられ、生徒たちは実力を着実に伸ばして花開くときを待っている。
入学者が大幅アップ
多くの賛同者が見出す
賢明の魅力
賢明学院では、今年度入学者が大幅にアップした。去年と比べ、中高合わせて300名ほど増えるという嬉しい悲鳴が上がっている。落ちついた女子校から共学校になったことで人気が集まったということもあるが、この生徒数の伸びはそれだけではない。授業料無償化により、公私間でも生徒獲得の競争が激化し、厳しい風が吹いている現在。それでもこれだけの生徒数が集められるというのは『素質を穏やかに温かく伸ばす学校』であることが、生徒や保護者に魅力的に映ったという要因がある。
「賢明学院を理解し、生徒にすすめてくださる公立中学の諸先生方や、塾長先生がおられるというのも大きな要因です。選ばれる私学としての価値を、品性ある賢明学院に見出してくださることが、賢明学院の持つ大きな存続意義である。私はそう考えています」
今後は海外への大学進学も目指すと言う南校長。外部の風がもたらした変革は、生徒たちや教員を含めた学院全体を、上へ、上へと導き続けている。
記者が取材を終えて校門を出ると、笑顔の男子生徒がしっかり立ち止まり、挨拶してくれた。これこそが「賢明の教え」と、すがすがしい思いで学校を後にした。
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