一気呵成のエネルギー
共学化を進める
Spirit of "THE BEST"学院の建学の精神は、この惹句的ひと言に凝結される。目標に向かって一日一時、ベストを尽くす過程こそが、人を豊かに育むとの考えから、学院内ではしばしば耳にする言葉だ。
また,人は心的豊かさを得て、初めて他人を愛する心を持つことができる。したがって、ミッションスクールの究極の目標である「人類に貢献できる人物の育成」の基礎基本に通じる生き方を表す言葉でもある。
「プロセスにこそ重きをおく教育実践では、体験の機会を豊富に設けることが条件」と話すのは、二年前に学院長に就任した中原道夫氏。小、中、高校で教鞭を取り、大学の募集担当も経験済みだ。教育現場と学校経営の両面を見てきた人である。
就任時、共学化は決まっていたが準備は進んでいなかった。トイレ、更衣室の新設はもちろん、予想される部活の多様化から校庭を芝生化することも必要と考えられた。また、創立以来、荘厳な印象が強かった校舎も、開放的な校舎に改装したかったという。理由は「それが外部の人が目で見て分かる『改革』だからです」と明快だ。
なるほど、システムを改革しても、それが外部に伝わらなければ、旧来の「お嬢さん学校」の印象は変わらない。共学化を成功させるには、50余年の地元でのイメージを変えることが求められていた。そして、変化に必要なのは一気呵成のエネルギーであった。
変化への躊躇に対し、中原学院長は「賢明学院が根ざすところのキリスト教の精神は、たかだか50年の歴史ではない。数千年来の教え、理念に基づく教育を行っている。共学化は一つの変化だが、壮大な歴史の前に大きな変化というほどのものではない」という言葉で応えた。「変わる」を前提に、教員に対しても「一人ひとりの生徒を伸ばす責任を果たせないなら賢明から去ってください」と言い渡したという。
厳しい言葉はそのまま学校再生の厳しさを物語っていた。「教員の仕事は受け持つ生徒一人ひとりを人間的にも学力的にも伸ばすことです。一方、私の仕事は子どもたちをいかに伸ばすかのトータルコーディネイトを行うことです。仕事ができない教員に厳しいことを言うことが、子どもを守るという私の使命なのです」とも。果たして、共学化2年目を迎え、学院は「校舎を借りたいほど」生徒数を増している。
塾と「二人三脚」を宣言
一風変わった特待生制度も
就任後、中原氏は地元学習塾に共学化と新しい国際教育のカリキュラム、そして特待生制度について説明して回った。
共学1期生からは、これまでの国内修学旅行に代えて、中3でカナダへ2週間の語学とスキー研修の実施を二年以内に決め、高1の3学期から1年間をオーストラリアに留学する制度では、現地で英語特訓を受けた後、現地高校で学ぶプログラムがすでに実施されている。今年は高2の希望者約100名がヨーロッパ研修旅行を、また、中3全員が韓国の英語村に研修に向かうことも決まっている。
中原氏は地元塾にこうした「変化」を伝えるとともに、一風変わった特待生制度も伝えた。その基準とは、「現時点での成績や偏差値ではなく、未来を感じさせる、将来伸びる可能性を感じさせるお子さんをおくってください」だった。 |
一般に、特待生選考には小学校時の成績、偏差値などの数字と面接によって決定されるが、もとより、学院は難関国公立合格を謳い文句にする学校ではない。また、10分、20分の面接で一人の生徒を理解し、判断しようとすることも不遜ではないかという中原氏の考え方が根底にある。
「今のお子さんの状況はともかく、将来この子は伸びるだろうということが、客観的に一番よくご存知なのは、塾の先生であり、中学校の先生であり、地域のスポーツクラブの指導者の方々です。私の経営姿勢は『人を信じて、人に頼る』ですから、こうした方々に判断をゆだねています」という。
塾側からは「そこまでいうなら託してみようか」という声があがり、共学化高校1期生は5クラス、2期生は7クラスと順調な滑り出しを見せた。中学校では少人数制を採っていることもあり、現在3クラスとなっている。生徒数の増加で、高校では遅くとも二年後にはコース再編を行いたい考えだ。現在は、地元近畿大学の医学部、薬学部を中心とした国公立理系大学への進学を目指す「近大医薬系進学」、近畿大学及び国公立文系大学、有名私大への進学を目指す「近大系属」、有名私大及び多様な進路への進学に対応する「総合進学」の3コース制を採っている。
これまで、大学受験では指定校推薦枠の利用希望者が多かったが、今後は幅広い進路に果敢に挑戦できる環境を整えていく考え。最後に、中原氏は「一人ひとりの卒業生、地域の皆さまから『来てよかった』『行かせてよかった』と言われる学校を創っていきたい。そう評価していただくことが、今後の生徒募集につながっていくと信じている」と結んだ。
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