「固定型」の電子黒板を
東海地区で初めて導入
少人数制の中高一貫体制を強化するため、平成22年4月に新体制をスタートさせた津田学園中学校・高等学校。中高6年間の授業を5年間で終える独自のプログラムによって、難関大学進学を目指して、勉学に励んでいる。本課の授業はもちろん、「朝の学習」や「課外授業」を通して、繰り返しの学習と個別対応の細やかな指導を行ってきた。
電子黒板の導入は、これまで以上に生徒の学習意欲や興味を引き出すのが目的。多くの学校は、説明資料として移動式の電子黒板を補助的に使っているが、同校はICT教育に力を注いでおり、メインの黒板として、東海地区で初めて「固定型」の電子黒板を取り入れた。
壁に取り付ける「固定型」であれば、従来の黒板のように、手書きでしっかりとした文字が書ける上、「移動式」でない分、スペースを有効活用できる。同校では、音楽や美術を除く、ほとんどの科目で電子黒板での授業を行い、各教員が知恵を出し合い、工夫しながら教えている。リーダーの山村光昭先生は、「小・中・高の教員たちで見学会を行い、研修を通して、電子黒板を使いこなせるスキルを上げていかなければと思っています」と思いを語る。他の先生たちの授業を見学することは、勉強になるそうだ。
数社のメーカーにプレゼンに来てもらい、文字がきれいに書けることをポイントに選んだという同校の電子黒板は、イギリス製のもの。タッチペンの持ちやすさや画面への書きやすさが、教員たちの間で好評だ。
視覚や聴覚に
訴えかける資料として
生徒のやる気を引き出す
電子黒板では、文字や映像を映し出すことができるようになっている。そのため、画面上で動画や写真を見せながら教科書の説明ができたり、インターネットに切り替えて、調べものができたりもする。映像、音声、文字データなどのマルチメディアを組み合わせた教材として活用できるのがポイントだろう。視覚や聴覚に訴えかける資料として、生徒たちのやる気を引き出しながら、電子黒板での授業の定着を目指している。
「板書の時間が短縮されることと、説明するときに情報量が増えるところがメリットです」と理科を担当している橋本貴亨先生。同校では、授業内容の理解を深めるために、時代背景や人物の詳細を資料や写真で提示し、生徒たちの関心を高めることを積極的に行っている。授業の幅を広げたことで、わかりやすくなったと喜ぶ生徒が増えた。
取材の中で、記者も実際の電子黒板を使ってみた。スクリーン上のアイコンを電子ペンでタッチすると、書いた内容の色や大きさを自在に変えることができ、意外と簡単に操作ができる。その上、スクリーン上に書いた内容を元の場所から別の場所に移動もできるというから、これまでの板書にはない魅力がある。もちろん、文章の大事なところに色のついた線を引いたり、丸で囲ったりという基本的な操作も自由自在にできる。
授業内容をUSBなどにデータとして保存し、授業改善や指導のスキルアップに役立つことが良い点だという。教材の準備をしておくことで、効率よく授業を行えることも電子黒板導入による利点。橋本先生は、「板書の時間を短縮すれば、授業のテンポが良くなり、短縮された分、より深い内容の説明や発展的な演習問題に当てることができる。生徒と向き合う時間も増えます」と、導入後の変化について話した。 |
ICT教育の充実で
生徒の社会性を豊かなものへ
同校の中学3年生は、日本の抱える社会問題をテーマに、3年間の積み重ねを披露するためのプレゼンテーションを毎年3月に行っている。「アベノミクス」「東京オリンピック」「日中問題」などをテーマとし、今年から電子黒板を使ってのプレゼンが行われることとなった。グループに分かれて、調べたことや考えを自分たちの言葉でまとめ、後輩たちの前で発表をする。過去には、人形劇やクイズ問題をまじえながら、自由な発想での発表も目立った。「将来、社会人になったとき、機械を使いこなす技術力や表現力を鍛えることにも良いと感じている」と橋本先生。電子黒板の導入により、使い方を通して、豊かな表現力が磨かれていくことだろう。
また、ICT教育の充実を図る同校は、導入から数ヵ月で、タブレット型端末を活用した授業を実現させた。タブレット型端末を使って、問題の解答を電子黒板に表示することができ、双方向型の授業を展開する。今後はデジタル教科書の導入も検討しており、時代に合わせた教材選びと授業の可能性を広げていく。
豊かな自然環境と最新の設備に恵まれ、「知育」「体育」「徳育」「国際理解」の4つの教育方針を持つ同学園。いろんな角度から、生徒のやる気を引き出し、希望の進路へ進めるよう、学習システムの充実と指導体制を整えている。また、一人ひとりの個性が際立つ文化祭や野外活動などの学校行事を通して、生徒の人間性や社会性を豊かなものとし、成長を確かなものとしていく。双方向型の授業で、表現力や創造性、技術を磨いて、同校での6年間の学びを終えた先にある生徒たちの活躍が期待される。
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