中2生が全国模試1位!
驚異の「伸びる学力」
「2・3期生とも、入学後の模試の成績の伸び方は1期生と全く同じ。『落ちこぼれも伸びこぼしも作らない』学習システムの効果が実証されました」
星陵中学校では、全学年がベネッセの「学力推移調査」を定期的に受験。2期生の一人が中2で全国首位に立ったが、「初めから学力が高いのではなく、入学後に伸びた結果」と橋本正中高連携検討委員会委員長は強調する。これまでの3学年が、全国模試で示した学校平均偏差値の推移の共通傾向は、初年度で約7ポイント、2年生後半で偏差値58台に上昇。60越えの生徒が学年半分、国語の偏差値が特に高い。
中学3年間で標準より525時間多い授業数を確保、英数は教科書検定外の教科書も使用し、習熟度別は3クラス体制。国語は「論理エンジン」で、言語力と論理思考力を磨く。そしてもうひとつ、星陵生が成長のために不可欠と自覚していることがある。中1生が口々に語るのは「勉強を教えてくれるから、友達は必要」。環境が幸いしている、と橋本氏。同校は富士地区を21ルートのスクールバスでつなぐ。
「バス時間まで教室で勉強する子が多く、試験前は19時のバスまで一緒に勉強しています。学校で勉強するよう、保護者も熱心に勧めてくれます」
互いの失敗や成功から、勉強方法を磨き合う彼らの「折れない強さ」を橋本氏は3年間、目の当たりにしてきた。鈴木正文中学統括主任も彼らから「生きる力」を感じるという。
「職員室に来て『数学の先生いますか?』と、面識のない高校の先生を掴まえて質問することもあります。いま自分に必要なものは何かを考えて行動する姿は、貪欲でたくましいですね」
混沌の中でこそ発揮される
真の「生きる力」
「僕たちはみんな、自分たちに勝ったんだ」。3年生生徒会副会長の、体育祭閉会の言葉に下級生たちも涙した。
昨年から高校と分離された体育祭を中学校単体で実施。当時3年生の生徒会役員10人と1・2年生の実行委員が「生徒主導」の運営に初挑戦した。種目選定段階から「あれもこれもやりたい」と意見が対立し「決められない」状態が続く。期限が迫る中、彼らは「他学年と交流しながら、どのように体力・男女の差を均等にすれば『戦える』のか?」という選定指針にたどり着く。そこから生まれたのが、男女とも2・3年生が馬となり1年生が上に乗る、星陵流の騎馬戦だ。川中島の決戦の再来という設定やナレーション、和太鼓で盛り上げる演出もすべて生徒が考えた。企画書や競技マニュアルをつくりながら、彼らは「決めるときは決める」強いリーダーシップが取れる集団に成長していく。が、そこに2年生が加わると意見にズレが生じ、後輩からの鋭い突き上げへの先輩の反発も加わり、会議は混沌状態に。焦燥感の中、3年生が変化に気付く。「さまざまな意見が出たり、ぶつかり合って多様性が生まれ、内容に厚みが出て、体育祭がレベルアップしているのが実感できた」。そして迎えた体育祭当日、鈴木中学統括主任はもう一つの変化に目を見張った。
「他の3年生がすごく協力的でした。旗を振って真剣に応援し、率先して動くから下級生もついていく。一生懸命な生徒会役員を手伝おうと、各々が協力できることを考え、自ら動いた。自分の仕事やポジションを見つけて動くのがリーダーシップ、従うのではなく、協力し合うのがまとまりがある集団。どんな状況下でも感性豊かに、かつ冷静な判断力で、周囲や下級生を率いて動ける、そんな『生きる力』を1期生は獲得できたと思います」 |
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本質を究める「美育」が
「感性と理性」を鍛え上げる
星陵の6年制一貫教育は2年ごとの発達段階を設けている。4期生(新中1)・3期生が「成長期」、2期生・1期生(新高1)を「発展期」と位置づけ、精神・学習両面で中学と高校を間断なくつなげる。高校の学習内容は発展期でほぼ終了、高2・高3の「飛躍期」で大学受験に備える。成長・発展期の4年間をかけて、人間形成に真っ向取り組むのが星陵オリジナルの「美育」だ。美術・音楽・科学・文化各界の「一流」や「本物」に触れて「本質を見抜く」繊細な感受性を養い、「事前学習→体験→プレゼンテーション」の探究活動で論理的な思考を身に付ける。
1期生は今年1月のハワイ海外研修でホームステイ2泊を経験。事前にイングリッシュキャンプを行い、帰国後はパワーポイントで資料を作り、全校生徒に向けて、英語のプレゼンに臨む。「感性と理性」を磨き合う4年目の今年は美育結実の年だが、生徒は「星陵生」として次代を見据えている。
「新中3の2期生生徒会は、独自の新たな取り組みへの意欲が旺盛。文化祭では生徒会主催の『おもてなし』を考えています。小学生が喜ぶことをしたい、といろいろ策を練っていますよ」
ただ鈴木氏は、生徒主導とは丸投げではない、と付け加える。生徒の思いつきに、どんな示唆や方向性を与えるか、感情ではなく論理的に思考させる絡み方を教員ができるかが肝だという。
「自ら考え、実現できる生徒を育てるためには、『そう思う理由は何か』と教員が常に生徒に問うこと。返答が論理的になって、初めて生徒の考えやアイデアが本物になる。本来の希望や本質に沿う形で具現化されていく」
「生きる力」を得た星陵生が各々に切り拓く未来、それこそ次世代の彼らが真に希望する日本の姿になるはずだ。
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