背中で学ばせる教師たちの姿
面倒見の良さは地元でも評判
安倍学園長は、公立高校長を務めた後、2010年に静岡県教育長に就任。県の教育界のトップを走ってきた。その経験から、私立・桐陽高校をどう感じているのだろうか。
安倍学園長「公立・私立はそれぞれの良いところがあると思います。私立高校の場合は転勤がほぼないということから、この学校に骨を埋めるという愛校心や献身的な意気込みを感じます。特に桐陽高校の場合は強い。これまでの伝統を受け、子どもたちとさらに次の桐陽の伝統をつくっていくんだ! という気概があります。面倒見の良さもとても強く感じます。子どもたちはここを我が家のように、まさに『桐陽ホーム』として先生を頼り、先生方も生徒にとても深い愛情をもって接していると感じます」
生徒と教員が深いコミュニケーションの中、学校生活を送るのが桐陽流だ。「先生がたとえ教えてなくても、歩いている後ろ姿からも、子どもたちが何かを学ぶことができるというのが桐陽の強みだと思います。やはり生徒が教師を慕うのには理由があり、教員として、人間として、どう生きているのか、その先生の一挙手一投足が無言の教育となっていると感じます。この学校にはそんな人格者の先生方が沢山いらっしゃいます。私も校長先生の後ろ姿から本当に沢山学ばせていただいています」
安倍学園長の言葉に対し「いえいえ、反面教師ですから」と謙遜する飯田校長。教師間の絆は生徒たちが生き生きと学校生活を送る一番の土台となる。
教師が一丸となり今がある
飯田校長が近年の躍進を語る
桐陽の教師の面倒見の良さは、飯田校長が赴任してきた14年前からすでにそうだったという。
飯田校長「その教員皆の気持ちがさらに一つになり始めたのは、坂根英夫前校長の時です。学校の改革に向けて、桐陽の姿勢を子どもたちや地域の方々に発信していく中、『英数進学コース』の立ち上げもありました。これは教員の間で意見が分かれ、1年以上検討していたのですが、最終的には皆でチャレンジを決め、教員は一つになり、必死に行動し始めたんです。その後、生徒募集も進学実績も上がり、ここ数年は国公立・難関私立大学に合格する生徒も増え、地域からも認められるようになったのです」
その分、生徒や保護者、周りの期待も大きくなってきているという。「とにかく立ち止まらないよう、上を向いて前を向いて、どんどん進んでいくしかないと思っています。線路を引いてくれたのは前校長。そして一人ひとりの先生方が、自分の立場を理解して、やるべきことをしっかりやっているのが今の結果につながっているのではないかと思っています」
桐陽高校の今後の課題と
これからの高校教育を語る
安倍 徹 学園長
飯田 瑞穂 校長
安倍学園長「桐陽の面倒見の良さはプラスでもありマイナスでもあるかもしれないと感じています。長いスパンで見たとき、親切すぎることが果たして良いのか。中・長期的な視点から本当の優しさとは何かということを考える時期に来ているのかとも思います。
一人で考えさせるといった一見不親切にも見える親切が、子どもたちとの対峙の方法として必要なのではないか。継続的な授業改善を通して、子どもたちが自ら考えるような発問を教師が考え、授業の質を高めていくことが求められていると思います。
また、社会で世のため人のためという場で活躍している先輩方の実体験や熱い思いを聞く機会を今まで以上に設けると、目覚める生徒もより多くなるのではと感じています」
飯田校長「これからの時代を考えた時、今までの常識が通用しなくなる気がします。勉強ができればいいと思われていた時代から、自分で生き抜いていく力を持たなくてはいけない。そして自分も周りの人も大切にできるような、そういう気持ちをもっていれば、知識も役に立つと考えています。
|
これから厳しい時代になっていくと思いますので、自分で何をやりたいか、何ができるか、ということを見つけられる人に育てていくことが、これからの教育に必要だと感じています。
桐陽の卒業生にはプロ野球選手も、キャビンアテンダントも、アナウンサーもいます。いろんな子たちがいろんな分野で活躍しています。教員の面倒見が良すぎることもありますが、子どもたちはのびのび育っている気がしています。その中で自分の目標をしっかり見つけて、進学して巣立っていく生徒をさらに増やしていければ良いと思っています」
安倍学園長「今は地球規模でものを考えなければならない時代だと思います。一つの地球の中で、自分は何をなすべきなのか。そういう広い視点で物事を考えていかなくてはいけない。そのためにどんな教育が必要なのかを考えると、理科と数学を同時に学ぶなど、教科がもっとボーダレスになったカリキュラムが、これからは出てくるのではないかと思っています。さらに、理系・文系といった分類を超えて幅広く勉強した中から、自分の得意分野を発見・生かしていくということも必要だと感じています」
ICT教育いよいよ本格化
さらに支持される学校を目指して
2022年の高校教育改革を念頭に、協議を重ねているという松本副教頭。来年度の1年生には、全員タブレットを持たせる予定だ。これまでの検証では、学習効果は不透明な部分が多いため二の足を踏んでいたが、表現ツールとして、アウトプットにウエイトを置いた教育には大いに期待できると判断し、導入に踏み切った。
今年もさらに進学率が上がり、松本副教頭は「周りの期待に応えなければいけないというのはプレッシャーでもありますが、期待されるということは嬉しいことですし、職員のモチベーションにもなります」と語った。
飯田校長は「まずは桐陽の良さをもっともっと周りに知っていただきたい。体験入学や見学会など、自分で見て雰囲気を味わって、桐陽に来たいと思っていただけたらと願っています。そのための工夫もしていきたい」と言葉も熱い。
桐陽高校は新しい時代に向けて、地域の期待に応えつつ、また細かな変化を繰り返しつつ、確実に結果を出し続けていく。
|