国公立大学進学度が増加
ますます来年度に期待
平成22年の改革から第一期生の卒業を迎えたこの春。生徒たちの巣立った先は、京都大、愛知県立大、静岡大、愛知教育大、茨城大、和歌山大、三重県立看護大、高崎経済大などの国公立大学をはじめ、有名難関私立大学も名を連ねる。6年間の成果としては、全体の過半数以上が国公立大学に合格した事実が挙げられる。
「1学年19名のうち、これだけの国公立合格者は今までにない。京大合格者が出たことからも、合格する大学のレベルが上がっている。しかし、我々教職員一同としてはもっとやれたのではないかという気持ちもある。今後も生徒と一緒にさらなる努力を重ねたい」
(山村光昭教諭)
在校生に向けて行われた卒業生たちの合格体験を語る会では、多くのエピソードが語られる一方、在校生たちの質問に対して体験からのアドバイスが飛んだ。目標を達成する方法や苦労したこと、苦手科目の克服方法や学習習慣の付け方など、在校生の知りたい内容をインタビュー形式で聴き出し、紹介した。
「先生方が一人ひとりに対して親身に相談に乗ってくれて、さまざまな面で支えとなり、精神面においてもたくさん成長させていただきました。後輩へのアドバイスを伝えるならば、『光陰矢の如し』。受験はあっという間にやってきます。小さなことでも毎日継続することが重要です」
(静岡大学教育学部 林 槻真さん)
「『自由・自主・自律』を掲げた学校だったので、生徒にいろいろと委ねられることも多く、自分から考え、行動することの大切さに気付かされたと思います。
今、自分がすべきことを先延ばしにせずにやり続けることが、成功への一番の近道だと思います。津田学園には受験に精通した先生方がたくさんいらっしゃいますし、どの先生も生徒と真摯に向き合ってくださいます」
(京都大学文学部 M浦友佳梨さん)
実際に合格した身近な先輩の言葉だけに、次に続く後輩たちも具体的なイメージを持てるという。
アクティブ・ラーニングで
思考・行動・伝達力を育成
勉強だけでなく、他にはない体験プログラムを行う津田学園。それらも合わせた相乗効果で、今回の入試結果に至ったと山村教諭は語る。
中学1年では入学式の後、すぐに行われるオリエンテーリング「仲間の学校」。2年で行われる自然体験活動「森の学校」では、3,000m級の本格的な登山を行うほか、大自然の中でテントを張り、たった一人で1泊する「一人プログラム」がある。体験する中で、人とのかかわりや自然への感謝の気持ちが湧くようになるという。
3年では「環境を考える旅」が行われる。今年は沖縄の慶良間諸島へ行き、透明度の高い海でのシュノーケリングほか、離島ならではの体験を満喫した。同時に各々の班で決めたテーマを旅の中で深め、下級生に向けて体験発表を行った。
普段の英語教育も体験重視で、朝のHRで英語での1分間スピーチを行うなど、英語を使う機会を常に作っている。特に3年生は、津田中祭(学園祭)で脚本・演出すべて自作の英語劇を行う。
「途中で言葉が出なくなるときもありますが、最後までやりきったという事実が、子どもたちの自信につながったと思います」
(出口隆教諭)
教育ICTの進捗と成果
柔軟な発想で機器を活用
現在、すべての教室が固定式の電子黒板になり、50台のiPadを活用。昨年の課題であった2つのツールの連携が整い、授業にも活かせるようになってきた。特に理科や社会など、写真や動画で授業にインパクトを持たせることができるようになったのが、大きな成果だ。
iPadは、ロイロノートというアプリを使用、まとめや発表に活用。プレゼン力を高めるため、インプットとアウトプットをスムーズにできるよう、授業を組み立てている。インターネットでの素早い情報収集もiPadを導入したメリットだという。 |
現役の科学者の指導のもと
科学分野の人材育成を
3年前から始めたサイエンスクラブは、今年から毎週月曜・週1回の開催となった。今年4月には三重県四日市市の化学薬品メーカー「フローラ」と産学連携協定を結び、同社から派遣される研究員のアドバイスを受けながら、中学生の部員がさまざまな質の高い科学実験に取り組んでいる。そして、将来の科学技術を担う人材育成を目指している。これも本物を体験させるという取り組みの一環だ。
hyper-QUの取り組みで
より良い学園生活を創造
同校では、昨年5月より生徒の学校生活意欲尺度と学級満足度尺度を明らかにし、生徒の学力向上と集団づくりに役立てるため「hyper-QU(ハイパーキューユー)」を取り入れた。人とのかかわり方、相手への配慮などの力をより高めるための試みだが、早稲田大学教育・総合科学学術院 講師 水谷明弘先生の指導のもと、同校では学力向上に焦点を当て、hyper-QUを活用することとした。hyper-QUのメリットは、これまで進学指導に長けたベテラン教員が経験に基づき指導してきたことを、客観的データに基づいて、ピンポイントで進学指導ができるようになることだ。
導入して約1年、具体的な成果もあがり、今後も継続的に段階を踏んで取り入れていく。新しい試みは生徒と学園の成長に大きな実りをもたらしそうだ。
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