1年間の「英語留学」で
時代が求める人材を育成
毎年ドラスティックに変容する大成中学校・高等学校。今年はどんな進化が見られるのだろうか。まずは昨年スタートした「英語留学コース」について足立誠校長に伺った。
「非常に優秀な生徒がこのコースに応募してきています。去年は生徒12名のうち2名が、今年は9名のうち1名が特待生です。また中学入試の段階で同コースを希望する声も多く、保護者からの期待の高さを実感しています」と手応えを語る。
1年間(1年次の2学期〜2年次の1学期)のカナダ留学を必須とし、この期間も含めた3年間で高校を卒業できる英語留学コース。カルガリーにある高校のESL(英語を母語としない人のための英語教育)授業では、世界各国からの留学生がクラスメイト。ホームステイでも英語漬けのため、生徒たちはみるみるうちに英語力と国際感覚を身に付けていく。
高校第二教頭で英語留学部長の田村宏昭先生は、「帰国後は将来に向けての目的意識が鮮明になり、必死で勉学に打ち込むようになります。自立心の成長も目覚しいですね」と、生徒たちの変化に納得の表情。海外の大学や国内のグローバル校など、難関校を目指す生徒たちを、ネイティブ講師による少人数授業や英検準1級対策などを通して全力でサポートする。初の卒業生が羽ばたく2年後が楽しみだ。
英語留学コースの新設で、新たな生徒層の開拓に成功した同校だが、近年、中学受験者と高校受験者の数を比較すると、前者のほうが増えているという。「名実ともに中等教育学校の姿に近づきつつあるのは事実です」と足立校長は展望する。
同校ではイデア(理想・理念)をそれぞれの教育形態で表現、名称化している。中高一貫(6年体制)の「ステューディア」コース。高等学校(3年体制)には、精鋭が集まり、難関国公立を目指す「ラトナディア」(6年制編入)コースと、文武両道を奨励し、有名私立を主に目指す「プラウディア」(普通進学)コース、そして「英語留学」コースの3コースがある。
「ラトナディア」の大改革で
中高一貫の幹をより太く!
さらなる変革について、足立校長が宣言したのは、来春に行うラトナディアの大リニューアルだ。
今年はステューディアへの編入希望者が過去最多だったことから、自校の中高一貫教育に対する高い評価を再認識し、ラトナディアをステューディアへの5年次編入コースに1本化する舵取りをしたのだ。現在でも、特に優秀なラトナディア入学生はステューディアへの編入生に組み入れられ、きめの細かい補習指導を通して、中学からの生徒たちとの開きもなくなり、切磋琢磨しながら難関校を目指している。
また、英語留学コースも将来的にはステューディアの中に位置づけたいという構想がある。それに伴い、高校から英語留学コースを志望する者は、ステューディア4年次への編入生となる。6年一貫に1年間の海外留学が組み込まれれば、6年間がより濃密にグローバルに進化することだろう。
「ステューディアでは中2で中3の内容を学びます。高い学習レベルも去ることながら、挨拶の徹底をはじめとする躾や多彩な学校行事を通した人間教育にも定評があります」と杉浦和彦先生(中学第二教頭・渉外部長)。ステューディアの太い幹にラトナディアと英語留学の枝が4年次から伸び、中高一貫の6年体制がよりみずみずしい大木へと育っていく。 |
注目の「プラウディア」へ
柔道界以外からも熱い眼差し
さて、大成の高等教育でますますクローズアップされるのが、プラウディアの存在だ。ステューディアと並び、もう一本の幹として大きく成長させたい意向という。
大成高等学校は全国でも名立たる柔道強豪校。神谷兼正先生(中学第一教頭・柔道部総監督)は、「寮では約40名の部員が共同生活をしていますが、学業にも手を抜かない指導をしています」と胸を張る。卒業生の近藤亜美選手(三井住友海上所属)はリオ五輪の有望株。古賀兄弟(高3の颯人、高2の玄暉)は平成の三四郎と称される古賀稔彦氏の子息で、2020年の東京五輪出場の期待も高い。今後、力を入れる方針のサッカーも強化部に指定された。人工芝が張り替えられたばかりのグラウンドで、ボールを追う選手たちの姿がまぶしい。
部活動と学業にメリハリをつけ、目的に邁進するプラウディア生たち。「旧帝大の准教授(プラウディア卒業生)に母校で講演していただきました。高校時代に培ったコツコツと積み重ねる努力の大切さを、その後の人生でもつないでいってくれていることが嬉しい」と、足立校長は目を細める。また、「各教室に掲げてある報恩感謝という言葉は、卒業後も生徒たちの心に根づいています」と話す。恩に感謝し報いること。個々の生徒たちが卒業後に幸福な路を歩み、社会を支える一市民として活躍することこそが、ひたすらに知性と人間力を育むことに魂を注ぎ続けた母校への報恩感謝に他ならない。
校舎の改装などで女子生徒が増え、明るくなった教室では日々、仲間との絆が深まっていく。校長が理事長も兼ねる組織体制は、円滑なコミュニケーションの職場環境を創造し、先生方の意見も積極的に取り入れられる現状がある。風通しのいい校風も、スピーディーな改革を成功に導く要因の一端という気がした。
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